「もう二度と来ない!」カタールW杯は大丈夫? 炎天下の徒歩移動、スタジアムは蒸し風呂状態、飲み物を求めトイレの水を…テストマッチは課題だらけ

2022年10月12日 リカルド・セティオン

熱中症で倒れる人が続出

約7万7000人が詰めかけたルサイルのアイコニックスタジアム。(C)Getty Images

 先日、カタールではワールドカップ本番に向けた最後のテストマッチが行われた。
 
 ルサイル・スーパーカップという名前で、サウジアラビアの強豪アル・ヒラルとエジプトのチャンピオンチーム、アル・ザマレクが対戦。試合が行われたのは、W杯のために砂漠にゼロから作られた町、ルサイルのアイコニックスタジアム。ピンクゴールドに輝く「砂漠の宝石」とも呼ばれている美しいスタジアムだ。

 国外からも多くのサポーターがやって来たため、スタジアムは7万7575人の入り。カタール史上最高の観客数を記録した。試合は1-1の接戦の末、PK戦でアル・ヒラルが勝利した。

 だが、このテストマッチ、試合内容はともかくその他が問題だらけだった。まずはスタジアムへのアクセスだ。もともとの計画ではスタジアムの地下に地下鉄の駅が直結する予定だったが、なぜか駅はスタジアムの1キロ手前に作られている。そのため、電車で来たならば15分以上、炎天下の中で何もない道を歩かなければならない。

 それならばと多くの人たちが自家用車で来たが、実は試合のある日はスタジアムの周囲は許可された車しか立ち入れず、数か所設置された駐車場は地下鉄の駅よりももっと遠いところにある。シャトルバスが運行してはいたが、その数は少なく、バスに乗るにも長蛇の列、またシャトルバスがまるで来ない駐車場もあり、結局1時間近い道のりを歩かなければいけない人も大勢いた。

 そのうえ、スタジアムまでの道には日陰になるモノはほとんどなく、人工な町ゆえ、店も自動販売機もなく、水分も摂れず熱中症で倒れる人が続出。案内に立っているボランティアも急遽集められたのか、あとどのくらいでスタジアムに着くかも把握していない状態だった。
 
 やっとの思いでスタジアムに着いても、そこで安心はできない。中に入るにはイハテラーズ(Ehteraz)というコロナに関するアプリを見せないといけないのだが、多くの人が集中したため電波がうまく拾えず、なかなか画面を表示できない。結局、そこでも長い列ができてしまった。

 中に入っても苦難は続く。カタールW杯の「売り」の一つは空調付きの快適なスタジアムだったはずだが、大勢の人が入ったためか空調はほぼ効かず、中の温度は約30度、閉め切っているため湿度も90%以上、快適とは程遠い状態だった。「暑い中を歩き並んで、やっとほっとできると思ったのに、中も蒸し風呂状態だった」との声があちこちで聞かれた。

 また、スタジアムに入る際に液体は没収されるため、中でも飲み物を探す人が大量に出たが、売店はほとんどない。ある父親は子供が脱水症状で失神しそうなところ、水を求めてスタジアム中をさまよい、警備員の一人からやっと飲みかけの水を恵んでもらったとSNSに投稿している。

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