【EURO2016】無敗で予選突破も盤石とは言えないイタリア代表――「隠し玉」はバロテッリとG・ロッシ?

2015年10月12日 白鳥大知(サッカーダイジェストWEB)

鬼軍曹コンテが何よりも重視するのは「献身」だ。

無敗で予選突破を決めたアッズーリ。しかし、戦術的完成度はコンテ監督が目指す水準には達していない。(C)Getty Images

 10月10日にアゼルバイジャンを3-1で下し、無敗(6勝3分け)で1試合を残して6大会連続のEURO本大会行きを決めたイタリア代表。とはいえ、その道のりは決して盤石とは言えなかった。
 
 序盤こそ3連勝と好スタートを切ったものの、その後はクロアチア、ブルガリア、再びクロアチアと3試合連続のドローに終わり、格下相手だったその後の3連勝で何とか突破を決めた格好だ。グループHで最大のライバルと目されたクロアチアの自滅がなければ、本大会行き決定は最終節までもつれた可能性は小さくない。
 
 2大会連続のグループリーグ敗退に終わったブラジル・ワールドカップ終了後、ユベントスでセリエA3連覇という実績を残したアントニオ・コンテが新監督に就任した。キーワード的には、前々任者のマルチェロ・リッピは「グルッポ(グループ)」、前任者のチェーザレ・プランデッリは「クアリア(クオリティー)」を掲げたが、この鬼軍曹は何よりも「デディツィオーネ(献身)」を重視。コメントからもそれは伺える。
 
「テクニック以上に人間性をより重視して、チームを作る。困難に耐え、必死に戦い、人の話を聞いて、チームメイトを助ける選手の方が、最後には魔法を起こしてくれると私は信じている」
 
「私のアッズーリ(イタリア代表の愛称)は、勝利のために最後の血の一滴まで惜しまない選手で構成される。楽して勝とうなどと思っている選手は、ごめんだ」
 
 プレースタイル的には、このハードワークを軸としたアグレッシブな攻撃サッカーを志向。守備はコンパクトネスを保ったプレッシング、そして攻撃はレジスタを経由したビルドアップから2トップの連携が軸となるフィニッシュまで、予め決められたメカニズムが基本だ。
 
 必然的に戦術的完成度が肝となるため、コンテ監督はAマッチウィーク以外のテストマッチやトレーニング合宿を要請。しかし、レーガ・セリエAや各クラブの協力が得られず、この1年強はほとんど思い通りのスケジューリングが組めなかった。
 
 代表チームの時間不足はもちろん他国も同じだが、「イタリア代表史上でもっともタレント不足」と揶揄される戦力的欠点を、ハードワークと戦術&組織によってカバーしようと考えたコンテ監督にとっては、ストレスが溜まる状況に違いない。
 
 実際、戦術的完成度は今予選を通して徐々に高まったとはいえ、指揮官の理想とする水準にはおそらく届いていない。活動時間が圧倒的に違うクラブチームと代表チームを天秤にかけるのはナンセンスだと承知で比較すれば、コンテ・アッズーリはコンテ・ユーベの半分程度の組織力しか備わっていない。

次ページついにコンテの代名詞である4-2-4の採用に踏み入る。

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