【日本代表/エリア別検証】距離感が改善された後半は、本田と香川を起点に厚みのある攻撃を実現

2015年10月09日 五十嵐創(サッカーダイジェストWEB)

【ディフェンシブサード|効果的な縦パスは槙野からの数本くらい。ビルドアップの拙さは隠しきれず】

長友と酒井高のSBは守備面でおおむね安定していたが、攻撃面では合格とは言えない。クロス精度はいまひとつで、組み立てへの貢献度も低かった。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

 無失点で乗り切った守備面での出来は、まずまず安定していたと言って良いだろう。吉田と槙野のCBコンビは完全に制空権を握り、「真ん中からロングボールを放り込んでくるのは分かっていた」と相手のアバウトなフィードを撥ね返し続けた。また、くさびのパスに対しても素早く寄せ、カウンターを出される前に潰せてもいた。
 
 SBもおおむね守備に穴を開けることはなく、安定した対応を見せた。長友にいたっては、ピッチの状況を判断して中央に絞ったりと、的確なポジショニングでCBをサポートし、ピンチの芽を的確に摘んでいる。
 
 一方の攻撃面は、合格点を与えられない。ハリルホジッチ体制下で初先発した酒井高は、タイミングの良いオーバーラップを見せていたものの、クロス精度はいまひとつ。長友は攻撃に参加する回数自体が減った印象で、両CBは「向上するために、さらにやりました」(ハリルホジッチ監督)という非公開練習でトレーニングしたセットプレーでチャンスを逃している。
 
 また、ビルドアップでの貢献度が低かったのも反省材料だ。効果的な持ち上がりや縦パスは槙野が見せた数回くらいで、相棒の吉田や長友と酒井高の両SBはまるで組み立てに参加できなかった。
 
 CBは足もとでボールを止めてパスの出しどころを探すシーンが多く、SBはCFやトップ下に入れるダイアゴナルのパスがほとんどなかった。シリアがアグレッシブにプレスにきたため、中盤の特にバイタルエリアにはスペースがあったが、岡崎や香川がギャップで受けようとしても誰も効果的なパスを出せなかった。
 
 スムーズにビルドアップできなかったのは、後述するボランチの機能不全が大きく関係しているものの、最終ラインの発想の乏しさも無関係とは言えないだろう。吉田が高い位置でボールを奪われたシーンが象徴するように、最終ラインの選手たちが縦パスを入れるタイミングを躊躇し、攻撃のリズムを悪くしていたのも動かしがたい事実だからだ。

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