板倉の負傷は痛いが…冨安&酒井が復帰。“チュニジア・ショック”を払拭する強固な守備組織を再構築したい

2022年09月23日 元川悦子

確認したい吉田と冨安の連係

昨年11月のオマーン戦以来の代表復帰となった冨安。負傷に悩まされてきたが、“完全復活”に向け、徐々に状態を上げてきている。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

「アメリカ戦はワールドカップ(W杯)に向けて良い準備になるように臨みたい。ただ、ワールドカップ仕様に走りすぎて、『何かを変えなければいけない』という方向にメンタルが行き過ぎて、これまで築いてきたベースが失われないようにしないといけない」

 森保一監督が慎重な発言をした通り、9月23日のアメリカ戦は、2か月後に迫った本番を視野に入れつつ、目の前の敵にしっかりと勝つという難題に挑まなければいけない。

 今冬のカタールW杯は"冬開催"で直前合宿ができない。準備という意味で難しさはあるが、それは対戦国も同じ。むしろ緻密な準備に長けた日本のほうがアドバンテージがあると言えるかもしれない。そう前向きに捉えて、まずはアメリカ戦を収穫の多いゲームにしたいところだ。

 とりわけ、6月4連戦の最終戦・チュニジア戦で0-3の惨敗を喫した守備陣の整備は、非常に大きなテーマ。そのシリーズでフル稼働した板倉滉(ボルシアMG)が左膝内側じん帯の部分断裂を負い、本大会行きが微妙になっただけに、現有戦力で強固な組織を再構築することが早急の課題と言える。

 そんなチームにとって朗報なのは、冨安健洋(アーセナル)と酒井宏樹(浦和)の復帰だろう。特に冨安は昨年11月の最終予選・オマーン戦以来の参戦となる。世界最高峰レベルを日々、体感する若きDFが戻ってくることで、キャプテン吉田麻也(シャルケ)の負担は確実に軽減されるはずだ。

 ただ、冨安は今季、アーセナルで徐々に出場時間を増やしている段階。どこまで強度を上げられるかは未知数な部分もある。「1、2、3月くらいはずっと怪我をしていて、その時が一番キツかった。今はシンプルにサッカーができて、試合に出られる状態であることを1つポジティブだと思っている」と本人は前向きだ。とはいえ、W杯出場国を相手に120%のプレーができるという確証はない。
 
 だからこそ、彼が今、どこまでやれるのか、吉田とのコンビに問題がないかをしっかり確認する必要がある。そこがアメリカ戦の最初のテーマと言っていい。

 酒井に関しても、複数回の怪我から復帰したばかり。百戦錬磨の32歳の右SBは「100%できると思わないと帰ってこない」とキッパリ言い切ったが、代表戦の高いインテンシティを考えると、リスクがないとは言えない。そのハードルをクリアし、W杯本番でも戦える状態に引き上げることが、今の彼にとっての重要タスクだ。

 森保監督も2人の状態を入念にチェックしたいはず。アメリカ戦でゴーサインを出せるようなら、本番に向けてのメドが立つ。左SBの大ベテラン長友佑都(FC東京)含め、森保ジャパン発足当初からのベース4枚が改めて確立されるのだ。
 

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