現地紙コラムニストが綴る――武藤嘉紀のブンデス挑戦記「“第3階級”マインツの身の丈に合った目標は」

2015年09月30日 ラインハルト・レーベルク

6年半で一度も降格争いを経験していないのは成功と言える。

開幕戦で昇格組インゴルシュタットに敗れたのは計算外だったが、その後の結果は妥当なものであり、評価できるだろう。 (C) Getty Images

 経済的に見て、ブンデスリーガは4つの階級に分けることができる。
 
 今年のマインツの移籍収支について言うと、収入が3500万ユーロで、支出は1200万ユーロだから、今夏の移籍収支は立派なプラスとなる。
 
 近年のマインツの経済成長は、どんどん進んでいる。しかしそれでも、リーグ全体のランキング上では、近年とそれほど変わらない。
 
 マインツの今期の収益は約1億ユーロで、クラブ史上最高となる見込みである。
 
 シーズン終了時までに集める勝点を40と想定すると、選手たちのボーナスを含めた給与、監督とコーチ陣、マネジャー、チームマネジャー、用具係、幹部数人の人件費にかかるのは2650万ユーロ。全予算の3分の1以下である。この人件費は、ブンデスリーガのランキングでは中より下、(先の階級で言うと)第3階級に入る。
 
 もっとよく分かるように比較してみよう。
 
 他チームを寄せ付けずに首位にいるバイエルンは、まるで他の惑星から来たようかのようである。年間収益は5億2000万ユーロ。世界選抜のようなチームの人件費は、2億5000万ユーロもかかっている。
 
 そこからかなりの差を開けて続く第2階級には、フォルクスワーゲン社の100パーセント子会社であるヴォルフスブルク(人件費1億ユーロ)をはじめ、ドルトムント(8770万ユーロ)、シャルケ(7000万ユーロ)、レバクーゼン(6000万ユーロ)、ボルシアMG(5500万ユーロ)が属する。常に欧州カップ戦に出場しているクラブだ。
 
 第3階級は、ハンブルクの4500万ユーロで始まる。ホッフェンハイムもほぼ同額で、シュツットガルトは約4000万ユーロ。フランクフルトが3800万ユーロ、ヘルタ・ベルリン、ケルン、ブレーメン、ハノーファーがいずれも3000万ユーロくらいだ。その下に、いずれも2650万ユーロのマインツとアウクスブルクがいる。
 
 そして第4階級は? ここにいるのは、昇格組のインゴルシュタット(1800万ユーロ)とダルムシュタット(1500万ユーロ)である。
 
 だから、マインツが1部リーグに昇格してからここまで6年半の間に、1日たりとも降格圏内に足を踏み入れたことがないのは、大きな成功と言っていい。

次ページ今期のような黒字を毎夏出せるわけでないことを承知している。

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