相生学院がジュニアユース創設、発起人は入学したての1年生。「高校生と一緒に遊ばせておく」新プロジェクトの狙いとは?

2022年08月22日 加部 究

在校生と総監督のバス内での会話から実現

相生学院がジュニアユース「FCクレセール淡路島U-15」を創設。初代監督にはゼムノビッチ氏が就任した。写真:相生学院高校提供

 昨年度の全国高校サッカー選手権、兵庫県大会のファイナリストで、早くも4年前の発足時の一期生からふたりのJリーガーを輩出した相生学院が、ジュニアユースを創設することになった。

 強豪高校がジュニアユースを創設して中高一貫の強化を目ざすのは最近の趨勢(すうせい)だ。しかし、相生学院の場合は発起人が在校生で、しかもこの春入学してきたばかりの1年生だった――。

 実は相生学院にはすでに生徒が起ち上げたスクールがあり、小学生を対象に安価で指導をしていた。発起人は今年卒業した一期生の白倉琉聖前主将で、スクール生の父兄からも「選手たちがみんなで教えてくれるので、コーチの数が多くて凄く丁寧」と好評を得ていた。
 
 選手たちの指導への興味に点火したのは、上船利徳総監督だった。上船総監督は東京国際大在籍中から、アルバイトで子どもたちへの指導歴を持ち、自ら身を持ってアウトプットの重要性を痛感していた。

「いつも子供たちの前で注意点を強調しながらデモンストレーションをするわけですが、それを繰り返していると、自分の試合でも忘れることがなくなり、しっかりと身についていくことを実感できたんです」

 また相生学院サッカー部では、様々な業種の成功者を招きセミナーを実践しているが、「新しいことを学んだら、自分でもアウトプットすることが大切だ」と講師たちも異口同音に強調していた。こうして選手がコーチを務めるスクールが始まったわけだが、今度は新入生の高橋新太郎が「あの子たちが将来ウチに来てくれたら、きっと面白いですよ」と、バスを運転中の上船総監督に話しかけた。

「だったらジュニアユース作れば」

「いいんですか!」

「うん、お前が名前もつけていいよ」

 とんとん拍子に話は進み、さっそく高橋が企画を起ち上げた。

「相生学院高校サッカー部1年生の高橋新太郎です。当高校が運営している小学生を対象とした『SALTOサッカースクール』と、これから起ち上げる『FCクレセール淡路島U-15』、『相生学院高校サッカー部』の3カテゴリーで同じコンセプトを持ち、日本一の育成ピラミッドを作ります」

 今年9月には2度のセレクションを実施することが決まり、初代指揮官には清水エスパルス監督時代には天皇杯制覇などの実績を持つゼムノビッチ・ズドラブコが就任した。
 

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