【山形】最下位でも“玉砕”覚悟でスタイル貫徹――指揮官の男気が山形を救うか?

2015年09月21日 小田智史(サッカーダイジェスト)

「引いて守る考えは私のフィロソフィー(哲学)にはない」(石﨑監督)

石﨑監督は「引いて守る考えは私のフィロソフィー(哲学)にはない」と自分たちのスタイルを貫く覚悟を改めて語った。写真:徳原隆元

「なぜ、山形が最下位にいるのか」――。
 
 前節の広島戦(●1-3)、今節の柏戦(△0-0)の戦いぶりを踏まえたうえでの率直な感想である。第1ステージで山形に0-3の完敗を喫し、彼らの力を身をもって体験している柏の大谷からも、「山形は、そこ(最下位)になぜいるのかというゲームをしていることが多い」と同様のコメントが訊かれた。

【J1 PHOTOハイライト】2ndステージ・11節

 残留争いの渦中にあり、リーグ戦16試合勝利なしと、結果を出せていないのは事実だ。とはいえ、広島戦では前半に主導権を握り、ハイプレスからのカウンターで先制点を奪ってみせた。柏戦では相手と同等のチャンスを作り、勝利にあと一歩のところまで迫っているのだ。
 
 だからこそ、選手たちや監督はジレンマを抱えている。
 
「我々に必要なのは勝利で、引き分けでOKではない」(山岸)
 
「この引き分けは納得いく結果ではない。負けてもおかしくなかったけど、勝ってもおかしくなかった」(西河)
 
「我々はレイソルと立場が違い、残留争いをしている。勝点1では喜べない」(石﨑監督)
 
 内容は良くても、肝心の結果が伴わない――。残り試合数が7(9節・松本戦が未消化。9/23に開催)とシーズンも佳境に突入し、降格を免れる15位以内に滑り込むには、もはや「内容どうこうではなく、結果を求めないといけない」(西河)状況にある。
 
 それでも石﨑監督は「勝てないのはキツイ(苦笑)」と話しつつも、"玉砕"覚悟で自分たちのスタイルを貫く意志を見せる。
 
「J1に残るために、引いて守る選択肢をとらないのか問われることもあるけど、引いて守る考えは私のフィロソフィー(哲学)にはない。もし、そういうサッカーをしたければ、監督を変えるしかない、それくらい割り切っている。やっているサッカーの内容は引け目を感じるものではなく、(選手たちも)勝てないからといって、誰ひとりとして下を向かない。私自身も後ろを振り返るつもりはない」(石﨑監督)
 
 周知のとおり、山形は予算規模の大きくないプロヴィンチャ(地方クラブ)だ。強豪クラブのように実績のある選手を獲得したり、有望な若手を大量に呼び込むことはできない。
 
 そのなかで周囲と渡り合うためには、と考えた末に、石﨑監督のなかで導き出された答えが「継続」だった。時には柔軟な考えを持つことも必要ではあるものの、例えば湘南が曺監督の下で縦に速いサッカーを突き詰め、"湘南スタイル"に昇華させ、今季のJ1の年間順位でひと桁につけている。その姿は、ひとつの理想的なモデルケースと言えるのではないだろうか。
 
「去年J2で6位からJ1に上がってきて、普通だったら(残留のために)守って守ってのサッカーをやる。でも、我々はJ2にいた時からそういうサッカーをやらないようにしてきて、今もその継続の延長線上にいる。(J2に)落ちてしまったら、またゼロからのスタートになってしまう。継続のなかで足りない部分を補わないといけない」(石﨑監督)

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