「3度目の正直」でラ・リーガ1部昇格を果たしたジローナの捲土重来

2022年08月02日 小宮良之

3度目のプレーオフでようやく日の目を見る

ジローナで2部降格を経験した主砲ストゥアニ。(C)Getty Images

 ラ・リーガの1部昇格プレーオフ決勝・第2レグは、テネリフェがジローナを本拠地に迎え撃った。ファーストレグはスコアレスドローだっただけに、テネリフェ有利と思われたが、劣勢に立った。PKを献上し、先制点を奪われた後、後半に追いついたが、ギアが上がらない。

 ジローナは、「3度目の正直」だった。過去2シーズン、プレーオフに進出しながら、あと一歩で昇格を逃していた。この機会は逃せない、という気概に満ち、士気は高く、準決勝では下馬評では不利だったエイバルとの試合も制していた。

 テネリフェ戦も1-1と追い付かれた後、選手が下を向かなかった。再び押し込むと、やや臆した相手のバックパスを見逃さずに奪うと、そのままカウンターを発動。右からやや強引に入れたクロスが相手選手に当たってコースが変わって、ネットを揺らした。

「サッカーはメンタルだ」
 
 それは定説だが、裏付ける形になった。
 
 この日、戦ったジローナの選手たちの中には、2度にわたって「失敗」した選手も少なくない。その無念さは消えていないだろう。経験は糧になっていた。

 先制点のPKを冷静に決めたクリスティアン・ストゥアニは、ウルグアイ代表FWとしてロシア・ワールドカップにも出場した選手だが、ジローナと命運を共にしている。3シーズン前に降格した時から、3度目のプレーオフでようやく日の目を見ることになった。36歳になるベテランストライカーとして、気骨を見せた。
 
 ゴールマウスを守ったファン・カルロス・マルティン、ディフェンスのサンティ・ブエノ、同じくファンペ、左ウィングのバレリー・フェルナンデス、交代出場したアタッカーのサム・サイス、そして右ウィングバックでプレーしたアルナウ・マルティネスは、1度目の昇格失敗の時には下部組織の一員だった。

 捲土重来の思いは強かったはずだ。
 
 当然だが、メンタルだけではフットボールにならない。
 
 21-22シーズンから指揮を執ったミチェル監督は、戦術的にチームを整備した。5-2-3から3-4-2-1の可変式のシステムを導入し、攻守のバランスを取ったチームを作った。選手のキャラクターを生かした戦い方を見つけたと言えるだろう。

 MFアレイクス・ガルシアは、中盤で軸になった。十代でマンチェスター・シティにその才能を買われながら、トップには定着できず。ムスクロン、ディナモ・ブカレストという欧州のクラブを渡り歩き、選手として成熟。25歳だが、頼もしいプレーだった。
 
 世界のどこであれ、どのカテゴリーであれ――。士気の高いチームは何かを手にする。そういうチームには有力な選手も呼び込まれるし、その連鎖が成功を生むのだ。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。

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