【横浜】訪れたチャンスに一発回答。大学生FW富樫が決めた決勝弾を多角的に考察

2015年09月20日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

的確なポジショニングによって生まれた値千金の決勝弾。

Jリーグのデビュー戦でプロ初ゴールを決めた特別指定の富樫。自分のセールスポイントは「常に泥臭くゴールを狙うタイプ。そこが強み」と語る。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

 ミックスゾーンに現われた中澤は開口一番、「ヒーローはもう決まっているじゃないですか」ときっぱりと言い切った。

【J1 PHOTOハイライト】2ndステージ・11節
 
 横浜の重鎮から"勝利の立役者"として認められたのは、先月に特別指定選手として承認されたばかりの、関東学院大4年のFW富樫だ。
 
 背番号37を背負う若きストライカーは、前節・新潟戦でベンチ入りを果たすと、今節のFC東京戦では73分に伊藤との交代でピッチに立つ。Jリーグデビューを飾り、迎えた88分、中村のお膳立てから豪快なヘッドでネットを揺らした。
 
 このゴールが決勝点となり、チームに貴重な勝点3をもたらした富樫はヒーローインタビューで、「幸せな気持ちでいっぱい」とコメント。加入時の「チームに少しでも貢献できるよう努力して参ります」という言葉を早くも実現してみせた。
 
 中学時代は横浜のジュニアユースでプレー。しかしユースには昇格できず、日大高を経て、関東学院大に進学する。一時はサッカーを辞めようと思ったこともあったが、周囲の人たちの手厚いサポートにより、プレーを続けようと決意。遠回りしたかもしれないが、再びトリコロールを身にまとった富樫は、訪れたチャンスに一発回答で自らの存在価値を示した。
 
「練習中からずっと『常に裏を狙え』と言われていました。(試合に出たら)ゴールを狙うことだけを考えていた」
 
 得点シーンでは、的確なポジショニングが勝負を決めた。
 
 敵陣左サイドでのスローインを起点に、アデミウソンからの落としを受けた下平が中村にパス。エリア内にいた富樫は、これを確認した瞬間、すぐ近くにいる丸山の視界から消えるようにバックステップを踏む。その後ろにも相手の左SB太田がいたが、ちょうどふたりのDFの間に位置取り、スタンバイ。
 
 この時点でゴールはほぼ約束されていたのだろう。
「あとは、ゴール前に飛び込めば。俊さんからは良いボールが来ると思っていたので」
 
 富樫の予想どおり、丸山の頭上を越えてくる中村の正確無比なクロスに対し、「ドンピシャ」のタイミングでヘディングシュートを叩き込んだ。
 
 中村からは「なるべく最終ラインにいろ」と言われていた。その中村も富樫のポジショニングについて「良いポジションを取っていた」と振り返っている。

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