「チームに喜びをもたらしてくれる選手」と指揮官が称える奥川雅也は再昇格を狙うビーレフェルトの紛れもないキーマン【現地発】

2022年07月31日 中野吉之伴

クラブのレジェンドが残留

シーズン初戦で初ゴールを決めた奥川。 (C)Getty Images

 7月15日に開幕した22‐23シーズンのブンデスリーガ2部。1年での1部再昇格を狙う、奥川雅也を擁するビーレフェルトはザンドハウゼンとのアウェーゲームに臨み、奥川がゴールを挙げたものの、1-2で落とし、幸先の良いスタートとはならなかった。

 昨シーズンのビーレフェルトはシーズン前の予想では降格候補の一つではあったものの、それでも20節終了時では残留への確かな可能性があったのだ。試合内容も悪くはなかった。フランク・クラマー監督とチームとの信頼関係に問題があったわけではない。

 ただ終盤戦ではなかなか思うように勝点を重ねることができなくなったのも事実。対戦相手からすれば奥川雅也とパトリック・ヴィマーという2人の得点源を抑えさえすれば、ビーレフェルトの攻撃は怖さは一気に半減してしまう。それ以上の解決策を見出すことはできなかった。

 世代交代に失敗したことも理由の一つかもしれない。昨シーズン限りでクラブを去ることを表明していたキャプテンのファビアン・クロスは、控えに回ることも多くなっていた。ただ、スタメンでFW起用されていたヤンニ・ゼッラもブリアン・ラスメもブンデスリーガで結果を出せるまでの段階ではなかった。キャプテンとしてチームを引っ張る役割は副主将のマヌエル・プリートルが担うことになっていが、苦しい状態のチームの中で自身のプレーと向き合うことで精一杯で、とてもチーム全体のことを掌握するまでには至らなかった。

【動画】DFを巧みにかわして正確なフィニッシュ! 奥川の今シーズン初ゴール
 クラマーの跡を継いだマルコ・コストマンは、33節のボーフム戦後に、「シーズン前から最後まで残留争いを戦うことになるのはわかっていたこと。今のポジションは驚くべきことではない。33節の時点で残留のチャンスを持っていることをポジティブにとらえている」と話し、最終節のRBライプツィヒ戦に一縷の望みにすがっていたが、残留は叶わなかった。

 再起を狙うチームにおいて、クロスが残留を表明した意味は大きい。4月のシュツットガルト戦で味方選手と激しく空中で交錯し、タンカで運び出されたシーンはあまりにもショッキングなものだった。頭に骨折を負ったことでシーズン中の復帰が叶わなかったわけだが、11年間、クラブとともに戦い続けてきた象徴的な選手にとって、そのままクラブを去ることは考えられない。

「このスタジアムをタンカに乗って横たわったまま去りたくなんかない」

 新監督のウリ・フォルテは迷うことなく、クロスをキャプテンに命名。「ファビアンはいまも野心にあふれている。素晴らしい」と絶大な信頼を口にしている。クロスも「ファンに昨シーズンよりもいいシーズンを送りたい。キャプテンマークがあろうとなかろうと、僕はみんなを引っ張る」と意気揚々だ。

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