【喜熨斗勝史の欧州戦記|第16回】カタール・ワールドカップを画期的な大会にするテクノロジーの全貌。だがベンゲルは「一番大事なこと」に言及

2022年07月29日 サッカーダイジェストWeb編集部

“セミオートマチックオフサイドシステム”を導入

アーセン・ベンゲル(写真左)と喜熨斗コーチ(写真右)。

 セルビア代表のドラガン・ストイコビッチ監督を右腕として支える日本人コーチがいる。"ピクシー"と名古屋でも共闘し、2010年のリーグ優勝に貢献した喜熨斗勝史だ。

 そんな喜熨斗氏がヨーロッパのトップレベルで感じたすべてを明かす連載「喜熨斗勝史の欧州戦記」。第16回は、FIFA主催のワークショップとパリ・サンジェルマンの日本ツアーについて語ってもらった。
 
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 リーグ戦が開幕したり、プレシーズンマッチを開催したりで、欧州は新シーズンの幕開けを迎えつつあります。今季は11月にワールドカップ・カタール大会。私自身、ワールドカップイヤーが本格的に始まるなという実感が沸いてきています。

 個人的にカタールで良い機会を得ることができました。7月1日から7日までの間、FIFA主催のワークショップに参加してきました。カタール・ワールドカップに出場する32か国の要人や現場スタッフが参加。今大会から導入されるテクノロジーの説明や、我々セルビア代表が宿泊する施設や練習場などを確認してきました。

 またアーセン・ベンゲルさん(FIFA技術研究グループ長、国際サッカー評議会のテクニカル諮問委員会及びサッカー諮問委員会のメンバー)やイングランド代表のガレス・サウスゲート監督とも話す機会に恵まれました。日本からは分析担当の方が参加。先月6月に行なわれた親善試合の日本対ブラジルのデータを頂いたお礼もでき、とても有意義な時間を過ごせました。

 今回のワールドカップは過去にないほどテクノロジーが進んだ、画期的な大会になると実感しています。まず、すでに報道されているように"セミオートマチックオフサイドシステム"の導入。これは各試合会場に12台のカメラを設置され、各選手やボールの位置を正確に計測します。ボールには計測チップが埋め込まれており、オフサイドポジションにいた選手にパスが通った時には、ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)に自動的に通知がいきます。VARはこれを受けて映像を検証。そしてフィールド上の審判員に通知できるようになっています。

 飛び出した選手がプレーに関与したかどうかは人間の目で確認します。そのためオフサイドディレイはありますが、明らかにひとりしか関与していないのならばオフサイド判定がされるようになるので、今よりもオフサイドディレイの回数は減るのではないでしょうか。現場としてはストレス軽減になるのは間違いないですね。

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