代表主将も「凄かった」と驚き。E-1でブレイクの町野修斗。9月の欧州遠征で躍動すればカタール行きの道も開ける

2022年07月28日 元川悦子

「ガツガツ行きます」と宣言した通りのギラギラ感

初のA代表の舞台で際立つ活躍を見せた町野。カタールW杯後を見据えても、育てていきたい逸材だ。写真:金子拓弥 (サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

[E-1選手権]日本3-0韓国/7月27日/豊田スタジアム

 香港に6-0、中国に0-0の1勝1分。2戦終了時点で2位に甘んじていた日本。E-1で2013年韓国大会以来のタイトルを獲得するには、最後の韓国戦で勝利するしかなかった。

 中国戦のスコアレスドローを受けて批判を浴びた森保一監督は、「E-1を戦っていくなかで、1戦目、2戦目と戦術浸透が良くなっていると思う。選手たちがチームの戦い方を踏まえて、個々の良さを最大限に発揮できれば、勝つ確率を上げられる」と前向きにコメント。2019年の韓国大会では、最終戦で敗れて優勝ならず。リベンジを果たすべく、選手たちを鼓舞した。

 その火付け役となったのが、最前線に陣取った町野修斗(湘南)だ。強い意気込みが表われたのが、開始早々の強引なミドルシュートだろう。岩田智輝(横浜)がボール奪取し、町野へ縦パスをつけると、湘南のエースは迷わず運んでペナルティエリア外から打ちに行った。

 惜しくも相手守護神のチョ・ヒョヌ(蔚山現代)に弾かれたが、香港戦後に「しっかりガツガツ行きます」と宣言した通りのギラギラ感を押し出した。

 これで日本の攻撃陣にスイッチが入り、マリノス勢が陣取る右サイドを中心に攻め込む。町野はボールを収め、起点となり、前へ出ていくという仕事を繰り返す。前半はシュート数こそ1本にとどまったが、水沼宏太(横浜)や相馬勇紀(名古屋)が折り返したシーンでは確実にゴール前に侵入しており、点取り屋としての嗅覚を感じさせた。

 そして迎えた後半。相馬の先制点が飛び出すと、日本の勢いが増す。韓国に疲労感が見え始め、スペースが空いてきたことも重なり、より町野がボールを触ってタメを作り、フィニッシュに行く回数が増えてきた。

 その最たるシーンが、2-0で迎えた72分のチーム3点目。藤田譲瑠チマ(横浜)がペナルティエリア外側の位置で収め、西村拓真(横浜)へ展開。西村から、右サイドで縦に抜け出した小池龍太(横浜)にボールが渡った時、町野は信じてゴール前へ走った。

「リュウ君が受けた時、『中で待っているね』という話をしていたので、狙い通りのゴールだった」と、してやったりの表情を浮かべた。これで大会3点目。本人が掲げた目標を達成し、有言実行で日本のタイトル獲得に貢献することができた。
 
 そもそも今季スタート時点で町野がここまで急成長するという想定はなかっただろう。開幕時点ではベンチスタートで、2月26日のサガン鳥栖戦(2節)で今季初得点も、その後も出たり出なかったりが続いた。

 浮上のきっかけとなったのが、5月21日のヴィッセル神戸戦(14節)。そこで2ゴールをマークし、勝利の立役者になると、続く25日の川崎フロンターレ戦でも2発。一気に波に乗った。

 そこから短期間で8ゴールまで数字を伸ばしたものの、7月2日の名古屋グランパス戦(19節)で終了間際に右足首を負傷。松葉杖をついてスタジアムを後にするほどで、今回のE-1での代表初招集が危ぶまれた。

 それでも、何とか間に合ってメンバー入りし、デビュー戦となった香港との初戦では代表初ゴールを含む2得点を記録するなど、目に見える成果でブレイクしてみせた。運を持ち合わせている彼は、2013年のE-1で代表デビューした大迫勇也(神戸)の後継者候補筆頭に名乗りを挙げたと言っても過言ではない。
 

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