愚直に、コツコツと。もう一度、そろそろ報われてほしい“広島の仕事人”

2022年07月28日 志水麗鑑(サッカーダイジェスト)

ディフェンス能力はピカイチだった

E-1選手権の韓国戦でゴールを決め、喜びの雄たけびを上げる佐々木。見事なヘディング弾だった。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

 やはり佐々木翔は仕事人だった。

 3-0で完勝したE-1選手権の韓国戦、左SBで先発した佐々木は、得意の対人守備で無類の強さを見せ、球際の攻防では自慢のフィジカルで相手を弾き飛ばした。1対1では、対峙した敵がトラップした瞬間や、ドリブルで持ち運ぼうとする2タッチ目など出方を見極め、絶妙なタイミングで間合いを詰める。ディフェンス能力はピカイチで、63分にCKから欲しかった追加点を奪うあたりも、きっちり仕事をこなす男である。

 中国戦では物足りなく見えた攻撃参加も、韓国戦では果敢なオーバーラップで1列前の相馬勇紀をサポートしていた。2試合をとおして見ると森保ジャパンのサイド攻撃は意図的に片方に偏っているようなので、中国戦は積極的に仕掛ける右の宮市亮&小池龍太コンビとの関係性を考慮して、佐々木はリスク管理で攻め上がりを自重したのかもしれない。

 広島でも、ピンチに時こそ身体を投げ出しているのは佐々木である。リスク管理の意識が染み付いていないと、大事な局面で仕事はできない。かゆいところに手が届く頼れる存在だ。

 だからこそ所属クラブでは主将に任命されるのだろう。森保一監督も広島で佐々木を指導した2015~17年に彼の仕事人ぶりを認識しているから、日本代表監督に転身してからも招集を続けているはずだ。
 
 脳裏に焼き付いているやり取りがある。2019年、荒木隼人のインタビュー記事の材料が欲しくて、頭角を現わしたこの新人DFに関するコメントを集めようと、最終ラインの隣で荒木を支える佐々木に取材した。失礼がないようにと、まずは佐々木本人のプレーを聞いてから、大卒ルーキーについて話を移した。

「なるほど、隼人の話が聞きたかったんですね。(僕のことは)気にしなくていいですから、隼人について先に質問してくれていいですよ」とニッコリ。未熟な筆者の心情をあっさりと読まれてしまったが、器が大きくて思いやりに溢れるパーソナリティに触れられた気がした。

 佐々木は2015年に広島でJ1優勝を経験したが、16年に右膝前十字靭帯断裂の大怪我を負い、17年は公式戦の出場がなかった。18年に完全復活し、愚直に、コツコツと、努力を重ね、任された仕事を全うしてきた。

 もう一度、そろそろ報われてほしいと心底願っている。それがワールドカップ出場なのか、それとも広島でのJ1優勝なのか。いずれにしても、自分を犠牲にしてでも仲間のために力を尽くす選手には、サッカーの神様が微笑む世界だと、筆者は信じたい。

取材・文●志水麗鑑(サッカーダイジェスト編集部)
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