決定力不足という常套句で中国戦を評する前に。指揮官や選手個々に求められる崩しのビジョンと技術力【編集長コラム】

2022年07月25日 本田健介(サッカーダイジェスト)

中国とまさかのスコアレスドロー

中国戦で得点を挙げられなかった日本。脇坂らを中心にチャンスを作ったが……。写真:塚本凜平(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

 力の抜けるような試合だった

 E-1選手権の第2戦として中国戦に臨んだ森保ジャパンは、23歳以下の選手を中心とした中国とスコアレスドロー。20本のシュートを放ちながらチャンスを生かしきれずに、よもやの引き分けで試合を終えた。

 日本はJリーガーのみ、しかも12人の初招集選手(岩崎悠人を追加招集)を含めたフレッシュな顔ぶれで大会に臨んでいるなか、指揮官は6-0で快勝した初戦の香港戦からメンバーを総入れ替え。A代表でデビューとなる広島のMF野津田岳人、柏のFW細谷真大、横浜のSB小池龍太らを起用した。

 それでも最後まで5枚でゴール前を固める中国を崩しきれず。見守っていた人たちの溜息を誘う内容だったと言えるだろう。
 
 今大会は同期時に行なわれているパリ・サンジェルマンの日本ツアーと比較されることが多い。方や超満員のスタジアムで観衆はスターたちの競演に酔いしれ、片や空席が目立つ観客席の前でどこか目的がぼやけているような試合に選手たちが必死に臨む。

 前述したように今回の日本代表には海外組が含まれず、森保ジャパンに長く参加してきた長友佑都、酒井宏樹らも招集されていない。一発本番に近い形でゲームに挑まなければいけないのだから、呼ばれた選手たちにとっては酷な状況となっている。

 クラブチームと代表チームを単純比較することはできないが、そのコントラストが表われており、興行面も強く勘定しているとはいえパリSGのゲームから学べることは多い。特に攻撃年において。

 メッシ、ネイマール、エムバペの"MNMトリオ"が揃って先発した川崎戦。リーグ王者の川崎は粘り強い守備でしっかり中央部を締めた。しかしそこをこじ開けてくるのだからさすがである。狭い隙間でしっかりポジションを取り、縦パスをビシッと入れて、出しては動いてを繰り返す。

 正確な技術、パススピード、相手を見る"目"が合ってこその多彩で力強い崩しであり、個々の技術力、個人戦術の高さが改めて際立った。一方で日本が中国戦で見せた攻撃はどこか急ぎがちで粗く、時間が経つにつれて相手の守備網の前で横パスを繰り返す回数も増加。スイッチとなる縦パスをなかなか入れられない状況が続いた。

 普段から練習を重ねるクラブチームと、特に今回はより即席間の強い代表チームの状況は異なる。それでも日常から相手守備網を崩す工夫をしている選手こそが、こういった場でもゴールを前を固めた相手を上回る術を提供できるのではないか。そうした想像を超えるプレーに観衆も興味を持つはずだ。

 決定力不足という常套句で試合を振り返る前に、各選手や指揮官の崩しのビジョン、技術力、個人戦術が不足していたことに目を向け、改めて常日頃こから取り組む必要があるのではないか。引いた相手を崩せない宿題を放置したままでは、周囲から興味を失われてしまうだけである。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

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