U-16代表候補の“199センチ”木吹翔太が示した成長の跡。規格外のFWは大柄で動ける選手に絶賛進化中

2022年07月18日 松尾祐希

課題だったステップワークも改善

U-16代表候補合宿で成長の跡を示した木吹。春先にはバイエルンのトレーニングに参加した。写真:松尾祐希

 どこにいても一目で分かる。高校1年生で2メートルに迫る身長。規格外のサイズを持つFW木吹翔太(こふぃ・しょうた/サンフレッチェ広島ユース)が久々の代表合宿で成長の跡を示した。

 7月11日から4日間の日程で実施されたU-16日本代表候補合宿。ガーナにルーツを持つ木吹は14日に行なわれた日体大柏との練習試合(●2-3)で先発出場し、2トップの一角に入って好プレーを見せた。

 199センチのサイズとリーチの長さを生かしたボールキープと空中戦の強さを発揮し、ゴール前では冷静な振る舞いでフィニッシュに絡む。最大の見せ場は13分だ。敵の背後に抜け出すと、寄せてきた相手をうまくブロックしながら前に運ぶ。最後は相手GKの股下を抜くシュートでネットを揺らした。

 以降も大きなスライドを生かした突破からチャンスを演出。課題だったステップワークも改善されつつあり、一皮剥けつつあることを証明するには十分すぎるパフォーマンスだった。

 この1年間を振り返れば、木吹は壁にぶつかっていた。昨年4月のU-15代表合宿でミドルレンジから強烈なシュートを叩き込んで名を挙げ、翌月には飛び級でU-16日本代表合宿に参加した一方で、以降は伸び悩んだ。運動量が少なく、決定的な仕事がなかなかできない。本人も改善に取り組んでいたが、気持ちとプレーがリンクしなかった。

 世代別代表も昨年11月を最後に遠ざかってしまう。そこで森山佳郎監督が成長を促すために動く。

「1回外したぐらいでは(木吹の性格的に)危機感が生まれない。危機感がなかなか出てこないので、過去3回の代表活動ではメンバーから外した」

 今年に入ってからは同年代の代表に一度も招集されていない――。代表から漏れたことで木吹にも危機感が生まれ、自分と向き合うきっかけとなった。

 JFAアカデミー福島U-15から1月に加入した広島ユースで、高校年代トップクラスの強度を体感。「最初はレベルが高くてついていけず、周りの選手たちもめちゃくちゃ上手かった。だけど、徐々に慣れていくと、自分ができるところとできないところがはっきりと見えてきた」。
 
 U-18高円宮杯プレミアリーグWESTではほとんど出場機会を得られていないが、チームが変わったことで新たな刺激を受け、成長曲線が加速していく。自身の特長を生かすだけではなく、課題だったランニングフォームの見直しにも着手。様々な種目のアスリートにランニング指導を行なっている里大輔氏の指導を受け、「膝の高さまでの回転数を上げることや、腕の振りをダイナミックにすることを教わった」。

 その結果、スピードが今まで以上に出るようになり、苦手だったオフ・ザ・ボールの動きも改善。まだまだ取り組んでいる最中だが、大柄で動ける選手に変貌を遂げつつある。

 自分と向き合うことで成長スピードを加速させてきた。その取り組みがあったからこそ、今がある。

「昨日もロールモデルコーチの中村憲剛さんから、ミーティングの時に自分にベクトルを向ける話を何度もされた。責任を取るのも、やるのもやらないのも自分次第。そこはずっとやってきたので良かったと思う」

春先にはバイエルンのトレーニングに参加するなど、周囲から寄せられる期待は大きい。「(U-17アジアカップ予選に挑む代表に)絶対に入りたい」と誓う超大型FWが今後どのようなプレーを見せるのか。壁を乗り越えた木吹の物語は幕を開けたばかりだ。

取材・文●松尾祐希(フリーライター)

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