【湘南】快進撃の要因は守備にあり! 好転のきっかけを掴んだ14節・神戸戦から9試合でわずか4失点の堅守を築けたふたつの理由

2022年07月17日 岩澤凪冴(サッカーダイジェスト編集部)

ポスト直撃のピンチも「『やられた』という感覚はない」

好調・湘南の“心臓”と言うべき活躍ぶりの田中。ピッチを縦横無尽に駆け回る、従来のアンカー像を超越した存在だ。写真:滝川敏之

[J1第22節]湘南0-0福岡/7月16日/レモンガススタジアム平塚
 
 きっかけは、2-1で勝利した14節の神戸戦だろうか。
 
 1週間前の横浜戦は1-4の完敗。守備面で課題を露呈したが、神戸戦では1失点に抑えて勝点3を掴んだ。少なからずディフェンス面に改善が見られ、守備時の距離感が良くなり、人に強く行くプレスが連動。開幕から目ざしてきたアグレッシブかつ整理されたプレッシングが形になり始めた試合だった。
 
 その神戸戦を皮切りに5勝3分1敗と好調を維持し、ここまでの9試合で許した失点数はわずか「4」。きっかけを掴んだ一戦から進化を続け、今節の福岡戦でも持ち前の堅守でクリーンシートを達成した。
 
 福岡戦では攻撃面で主武器となっている鋭い楔とテンポの良いパス回し、奪ってからのカウンターを封じられてしまったため、守備の時間が長かった。奪ってから精度の高いロングボールを前線に当て、素早いカウンターを放つのがアウェーチームの狙いだが、ボールを収められても落ち着いて対応し、相手のシュート数を4本に抑えるなど安定感は上々だった。
 
 しかし、まったく危なげなくなかったかと言えば、そうではない。60分にジョルディ・クルークスが味方に合わせたFKが、64分にはルキアンのヘッドがポストに直撃。昨夜の無失点は運が味方した面もあるだろう。
 
 今節の狙いについて谷晃生に聞くと「ロングボールを多用するチームなのは試合前から分かっていた。自由に蹴らせないように前から制限をかけて、後ろはしっかりと跳ね返し、中盤でセカンドボールを回収する狙いを持って戦いました」とコメント。
 
 また杉岡大暉はポストに助けられた場面について「最後まで寄せていたから、枠に飛ばなかった。自分たちとしてはあまり『やられた』という感覚はない」と、冷静に語った。
 
 ふたりの言葉に、ここ9試合で堅守を築けている理由が見える。
 
 ひとつは相手の戦い方を分析したうえで、自分たちの良さを出すための、最善の守備を選択できている点だ。湘南の強みは、中盤のボール奪取力にある。特に17節のFC東京戦以降、田中聡の躍動感は別格。奪ってからすぐに前を向く技術にも優れているため、彼がボールを奪えばチャンスの起点になる可能性が高い。
 
 もうひとつは粘り強い対人守備だ。さすがは現役時代、CBや守備的MFで抜群の働きを見せた山口智のチームと言うべきか。もとより湘南の武器だった、最後の局面で身体を張るプレーに一層の磨きがかかっている。杉岡が口にしたように、冷静に最後まで自分のできる仕事をする意識を各々が持ち続けているから、シュートを打たれても枠に飛ばない守り方が実現できているのだろう。
 
 前半戦は開幕10戦未勝利などもあり苦しんだ湘南だが、長かったトンネルを抜け、驚異的な勢いで快進撃を続けている。先述の神戸戦前の時点で最下位だったチームは、福岡戦を終えて暫定11位に。現在発揮している堅守を維持できれば、目標である「5位以内」も見えてくるはずだ。
 
取材・文●岩澤凪冴(サッカーダイジェスト編集部)
 
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事