FIFAも“想定外”だったイスラエルのU-19欧州選手権準優勝。アマチュア軍団のU-20W杯出場が「頭痛の種」になる理由

2022年07月12日 リカルド・セティオン

練習の行き帰りのバス代に困る者も

決勝でイングランドに敗れたとはいえ、U-19欧州選手権で躍進したイスラエル。(C)Getty Images

 先日までスロバキアで行われていたU-19ヨーロッパ選手権。決勝ではイングランドとイスラエルが対戦し、前者が3-1で勝利した。しかしこの試合は、ただのファイナルではなかった。その背景にはいろいろなニュースや問題が隠れている。

 まずなにより、まさか誰もイスラエルがここまでやるとは思わなかった。例えば彼らが決勝で戦ったU-19イングランド代表のメンバーは、ほとんどがすでにプロ契約をしている。時には有名選手の傍らでもプレーし、最高の施設やサポートを得ながら日々トレーニングをしている選手たちだ。

 一方、イスラエルU-19は全員がアマチュアだ。5人だけはイスラエル国内チームの下部組織に属しているが、いまだプロ契約はしていない。あとは全員が兵役中だ。イスラエルでは心身に問題がない限り18歳から男女全員が兵役につき、男子はその期間が3年とされている。

 イングランドの選手はすでに高い給料をもらっているというのに、イスラエルの選手は練習の行き帰りのバス代に困る者もいるという。そのチームがディフェンディングチャンピオンのセルビアや優勝候補の最右翼だったフランスを抑え、決勝にまで勝ち上がって来たことは、それ自体すでに快挙である。
 
 決勝でもかなり善戦した。先制したのはイスラエルだったし、90分間では1-1だった。ただ延長に入ると両者の違いが浮き張りになってしまった。イスラエルの選手はイングランドに比べると、やはりフィジカル面が不足している。目に見えて疲れてきて、延長後半たった8分間のうちに2ゴールを奪われてしまった。

 もう一つ注目したいのは、これがU-19ヨーロッパ選手権であることである。こうした各大陸のユース大会はU-20ワールドカップの予選も兼ね備えている。そのため、国際サッカー連盟(FIFA)はそれまでU-19だった各大陸の大会の年齢をU-20に変更して、自分たちに足並みをそろえるよう各連盟に望んできた。南米、北中米・カリブ海、アフリカ、オセアニア、の各連盟はそれに倣い、アジア(AFC)も今年から U-20アジアカップに変更された。

 だが欧州サッカー連盟(UEFA)だけはその年齢を変更しようとはしない。彼らはその理由をこう主張している。

「U-20という年齢では、もうほとんどがトップチームで活躍しているプロとなる。これでは本当のユースの大会にはならない」

 UEFAとFIFAは数多くのことで対立している。例えばFIFAが提唱するクラブワールドカップの32チーム制、W杯の2年ごとの開催にUEFAは反対している。FIFAは権力に逆らうものに我慢できず、UEFAは自分たちが世界で一番レベルの高い大会をできることを自覚しており、自説を曲げない。例えばこのU-19ヨーロッパ選手権は世界141か国にTVもしくはストリーミングで配信された。

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