なぜ横浜は6連勝できたのか。広島戦で披露した「ハイプレス攻略法」にチームの進化を感じた

2022年07月07日 藤井雅彦

6試合すべて複数得点、計18得点

効果的なフィードで攻撃でもキーマンとなった高丘。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

[J1第20節]横浜3-0広島/7月6日/日産スタジアム

 横浜が6連勝を達成した最大の要因は、チームとしての進化だ。

 アンデルソン・ロペスを出場停止で欠きながらも、その6試合すべてで複数得点を記録し、計18得点を叩き出した。主砲不在の穴を埋めたレオ・セアラや西村拓真、あるいは途中出場で貴重なオプションとなっている宮市亮といったオフェンス陣を褒めないわけにはいかない。

 しかしながら、チームとしての文脈で語るならば、ビルドアップを含めた自陣での戦い方に大きな進捗があった。それは2試合連続ゴールとなった広島戦後に「チームとして相手ゴール前までボールを運べていることが良かった」と振り返った宮市の言葉通りである。

 広島は前回対戦と同様に高い位置からプレスを仕掛けてきた。ゴールキック時には左右に開く横浜のCBをマンマーク気味に監視。中盤や最終ラインで食い止めるのではなく、相手の攻撃の第一歩を封じる策に出たというわけだ。

 対して、横浜が選んだ策は柔軟だった。

 センターバックの畠中槙之輔は「相手がプレスに来ることは分かっていたので、相手をどう困らせるかを考えていた。何度か引っかかる部分もあったけど、上手くボールを前進させることができた」と狙いの一端を明かす。ポイントは相手を困らせること、そしてボールを前進させるという目的だ。

 横浜のゴールキックは、GK高丘陽平が左右のCBへ供給するボールから始まる。だが広島が圧力をかけてくることを想定し、この試合ではミドル&ロングのフィードを多用。徹底的にショートパスをつなぐはずの横浜がややアバウトなボールを選択したのだから、広島が意表を突かれたのは言うまでもない。
 

 もちろんボールをつなげる時はつなぐ。それができない時には、蹴る。右SB松原健は「相手の出方をうかがいながら、自分たちのサッカーが出せたと思う。大前提としては下でつなぐ。でも相手が前からハメに来た時は、(高丘)陽平のキック力なら相手をひっくり返すことができるので、そういうオプションは頭にあった」と手ごたえを口にした。

 フィードの先には、フィジカルとポストプレーに優れるL・セアラや運動量と跳躍力を武器にする西村がいる。実際に彼らはビルドアップ時のターゲット役としても貴重な役割を果たし、相手ゴール前以外でも重要な仕事を担っていた。

 キーマンとなった高丘が冷静に試合を振り返る。

「相手がマンツーマン気味にプレッシャーに来るので、それをひっくり返すことを練習で落とし込んでもらっていて、そのおかげである程度ボールを前へ進められたと思う。コンセプトとしてはボールをつなぐけど、ボールを前へ進めることも大事。そのためにショートパスよりもミドルやロングのフィードが多くなったけど、そこは使い分けている」

 ビルドアップの狙いは、ボールを良い形でアタッキングサードに運ぶ点にある。ショートパスに固執するだけが得策ではなく、相手の狙いや陣形を見ながらの次善策も必要だろう。

 横浜は、かつてのような一本調子のチームではなくなりつつある。首位快走も頷ける、内容の伴った3対0完勝と6連勝だ。

取材・文●藤井雅彦(ジャーナリスト)

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