“欧州最強”でも画期的なフットボールするわけでもない。それでもなぜマドリーはCLのタイトルを獲れるのか【現地発】

2022年07月05日 エル・パイス紙

マドリーを特徴づけるオリジナリティとは何なのか

昨季にリバプールを決勝で下して14度目の戴冠を果たしたマドリー。(C)Getty Images

 レアル・マドリーはパリで21-22シーズンのチャンピオンズ・リーグ(CL)における旅路を最も素晴らしい形で締めくくり、自分たちがフットボール界で唯一無二かつ他に比類のない存在であることを知らしめた。

 マドリーというオリジナルカクテルは、神がかり的なもの、人間的なもの、型破りなもの2要素をブレンドすることで生まれる。しかも他のクラブにとって厄介なことにその配分は未知な領域であり続けている。

 マドリーを簡潔に定義すると、効率性をこれ以上ない形で刷り込むことで成功を収めているチームとなる。フットボールを分析する際に使われる古典的な用語に当てはめれば、その特権的な地位を説明するためのあらゆる条件を満たしている。そしてクラブとしての伝統は、その名声に惹かれ、世界各地から集結したトッププレーヤーが、何世代にもわたり何十年もかけて集めた、多彩なタイトルのコレクションの上に築かれている。

【PHOTO】最多14度目のCL制覇を成し遂げたレアル・マドリー! 歴史に名を刻んだV戦士を一挙に紹介!
 マドリーが他を寄せ付けないほどの確固たる地位を築くに至ったのは、強力な経済力、質の高い経営、全世界的なファンの拡大によるところが大きい。ただ同時にフットボールにおいてはいずれもベーシックな要素であり、当然マドリー固有のものではない。現に同じように金満で成功する準備が完璧に整っているクラブは他にもある。しかしマドリーとは異なり、あらゆる状況に対応できる独自の個性を見出せないまま後塵を拝し続けている。

 では、そのマドリーを特徴づけるオリジナリティとは何なのだろうか? 私はフットボールの論理を変容させ、自分たちの目標にアジャストさせる力にあると考える。定説を覆すことで導き出した答えをコントラストと矛盾の中で露見させるような芸当も事も無げにやってのける。

 パリ・サンジェルマン、チェルシー、マンチェスター・シティ、リバプール戦での勝利の反響は、そのプロセスがスリリングだったことと無関係ではない。苦悩、ドラマ、歓喜など過去に記憶にないほどの感情の揺れは、劇的に次ぐ劇的な戦いぶりに凝縮されていた。そしてそうした数々の死闘を乗り越えて、マドリーはパリで王者に輝いた。

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