浦和MFモーベルグの波乱万丈のキャリア。監督や先輩に反抗、「打ちのめされた」英国での挫折、クラブの英雄に「あんた誰?」

2022年07月02日 鈴木肇

「モーベルグはメッシより速い」

浦和のファンを魅了しているモーベルグは、現在では想像できないようなキャリアを送ってきた。(C)SOCCER DIGEST

 今季から浦和でプレーするスウェーデン人MFダヴィド・モーベルグが、初めてヨーロッパを飛び出してプレーする日本で存在感を発揮している。切れ味鋭いドリブル突破を武器にチャンスメークとフィニッシュの両面に絡むそのプレーはサポーターを魅了。ピッチの外に目を向ければ、納豆を食すなど日本の生活も満喫しているようだ。

 キャスパー・ユンカー、アレクサンダー・ショルツとともに北欧トリオを形成して人気を博している28歳のアタッカーは、日本に来る前のキャリアは決して順調ではなかった。ここでは、スウェーデンのサッカー誌『Offside』(2018年3月)および地元紙『Göteborgs-Posten』(2022年2月)のインタビュー記事をもとに、モーベルグのこれまでの歩みを紹介したい。

 1994年にスウェーデン西部のマリエスタードで生まれたモーベルグは、地元クラブのIFKマリエスタードでサッカー選手としてのキャリアを本格的にスタートさせ、14歳のときにトップチームでデビュー。スピードとドリブルを前面に押し出したスタイルで徐々に頭角を現わすと、2009年にU-17代表に招集される。モーベルグのプレーにはフルアムやサンプドリアを含めた複数の国内外クラブが興味を示したが、本人が選んだのは子供の頃から応援していた母国の名門IFKヨーテボリだった。

 持ち味のスピードとドリブルはヨーテボリでも十分通用することを証明し、クラブ加入から1年も経たないうちに17歳でトップチーム昇格を果たす。余談だが、あるチームメイトが「ダヴィド・モーベルグ・カールソンはメッシより速い」と冗談交じりにツイートしたというエピソードが残っている。
 
 一方で、その頃のモーベルグは大きな問題を抱えていた。精神的に未熟過ぎたのだ。

 ある日の練習では指示を無視したことで怒鳴られると、我を失ってミカエル・スターレ監督目掛けて思い切りボールを蹴ったことがあった。また当時のヨーテボリにはいわゆる上下関係が存在し、若手選手が練習や食事の片付けをしなければならなかったのだが、そういったルールに納得できなかったモーベルグは先輩選手に対して怒鳴り散らしたこともあったという。上下関係の是非はさておき、スターレは「当時の彼は反抗的だった」と振り返っている。

 練習後に指揮官からさまざまな助言を受けても耳を傾けず、我流を貫き通そうとした。自らの道を行くと言えば聞こえは良いが、サッカー選手として大成していない若者が取るべき態度ではないことは言うまでもない。傲慢な振る舞いのせいで構想外になってもおかしくなかったが、若手選手を辛抱強く育てるスターレのおかげもあってプレー機会を得ることができた。

 1年目こそ途中出場2試合のみだったが、3シーズン目の2013年には8試合に先発出場して2得点をマークしている。モーベルグの抱える問題が表面化したのは、その後のことだった。
 

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