なぜ次期セレソン監督候補が日本の2部へ…ブラジル人記者も驚いた長崎のカリーレ招聘「国内3クラブのオファーを蹴って…」

2022年07月01日 リカルド・セティオン

選手一人ひとりのカルテを作成

ブラジルで数々のタイトルを手にしているカリーレ監督。(C) Getty Images,

 ファビオ・カリーレが日本の2部チーム、V・ファーレン長崎の監督に就任したことは、ブラジルでは大きな驚きをもって報じられている。

 現在48歳のカリーレはブラジルの次代を築く監督と言われている。彼ほど若くしてブラジルのビッグチームを率いた者はいないし(43歳)、彼ほど若くして全国タイトルを征した者もいない(44歳)。いや、そればかりか次期ブラジル代表監督候補として名前が挙がっており、しかも候補者の中で最も若い。長崎は本当に素晴らしい監督を手に入れた。

 まずは彼の経歴をざっと紹介しよう。現役時代はビッグクラブでプレーする機会はほとんどなかった。ほとんどが2部、3部のチームで、唯一コリンチャンスでプレーしたことがあったがそれも半年だけだった。ポジションは左SBもしくはCB。真面目で堅実な選手ではあったので、チームでは常にレギュラーだった。

 2007年に引退し、指導者の道に進んだが、それは大きく2つの時代に分けられる。07~16年までのアシスタントコーチ時代、それ以降の監督時代。カリーレにとって特に重要だったのはこのアシスタントコーチ時代だ。彼はこの時期に多くのことを学び吸収している。

 コリンチャンスでは勝ち取れるすべてのタイトルを手に入れ(カンピオナート・パウリスタ、カンピオナート・ブラジレイロ、コパ・ブラジル、コパ・リベルタドーレス、そして2012年にはチェルシーを下してのクラブワールドカップ)、その後代表監督となるマノ・メネーゼスとチッチという2人の名将の下でアシスタントコーチを務めた。
 
 それは彼にとって素晴らしい学校だった。いや、反対に彼が名将たちに影響を与えたことさえある。アシスタントコーチ時代、カリーレは若い選手のスカウトや育成も任されていたが、その際科学的な手法で選手を分析、把握した。

 彼は選手一人ひとりのカルテを作成し、テクニック、フィジカル、健康状態、メンタル、性格など、多岐にわたる項目に分類して書きこみ、選手の状態を知るのに役立てた。チッチはこのやり方を高く評価し、現在ブラジル代表でもその手法を導入している。

 2016年9月、解任された指揮官の代役としてカリーレはコリンチャンスの暫定監督となる。そしてそれ以降、アシスタントコーチに戻ることはなく、12月には正式に監督としてサンパウロ州で最も人気で強いチームを率いることとなった。

 監督となって3か月でサンパウロ州で優勝を果たし、2017年のカンピオナート・ブラジレイロでも2位以下を8ポイントも引き離して全国優勝を果たした。彼のコリンチャンスは14試合連勝、19試合連続無敗という記録も打ち立てた。ちなみにこの時の得点王が元名古屋にいたジョーである。

【動画】ファビオ・カリーレ新監督の就任会見をチェック!

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