【ブラインドサッカー日本代表】障がい者スポーツに「勝負の駆け引き」を求めるのは酷か?

2015年09月08日 海江田哲朗

攻撃力で抜けていた中国とイランは駆け引きの面でもしたたかだった。

2強の壁を崩せずパラリンピック出場はならず。組織的なディフェンスが通用しただけに、攻撃力の強化が今後の課題と言えそうだ。写真:海江田哲朗

 9月7日、IBSAブラインドサッカー・アジア選手権、予選リーグ最終日。2位のイランが韓国を4-0で下し、この瞬間、日本代表のパラリンピック初出場の希望は虚空に消えた。直後の試合、日本はマレーシアを2-0で破ったが、イランに勝点1及ばなかった。
 
 予選リーグの最終結果は、1位中国(勝点13)、2位イラン(同11)、3位日本(同10)、4位韓国(同6)、5位マレーシア(同3)、6位インド(同0)。8日に順位決定戦が行なわれ、優勝はイラン、日本は韓国にPK戦の末に敗れ、4位となった。
 
「こんなにもパラリンピックへの道は険しいのかと。中国、イランに対しても点を取って勝てるようにならないと上には行けない。もっとレベルを上げて、点の取れる選手になりたい」と振り返ったのは、大会7ゴールの活躍でチーム得点王の川村だ。
 
 キャプテンとしてチームを牽引してきた落合は、環境面の向上を訴えた。
「ブラインドサッカーを含めて、サッカー文化が根づくことが大事。海外にはブラインドサッカー専用のコートがあるが、日本にはまだありません。日本はチームの平均年齢が高いのも課題。代表を目指す若い選手がどんどん出てきてほしい」
 
 そして、指揮官の魚住監督は次のように話した。
「選手たちは積み重ねたサッカーを存分に表現してくれました。これまで多くの方々に支えてもらい、ホームでサポーターの後押しを受けながら結果を出せなかった。すべて私の責任です」
 
 日本の組織化されたディフェンスは通用した。同時に、堅守速攻のスタイル、強者に対してはカウンターを警戒し、単騎特攻が主となる戦法の限界も示した。中国、イランの攻撃力は抜けており、両者がリオ・パラリンピックの出場権を獲得したのは妥当な結果と言える。
 
 大会を通じて象徴的だったのが、4日目の中国対イランのゲームだ。両者はあからさまに消極的な戦いをし、0-0のドロー決着。これにより中国は2位内をより堅固にする勝点1をプラス、イランは日本が残り2試合で大量得点しても得失点差が影響しない状況を作った。じつにしたたかである。
 
 正直、私もブラインドサッカーでその発想は抜け落ちており、やられたと虚を衝かれる思いだった。善し悪しは別にして、こういった駆け引きもまた、まぎれもなくサッカーの一部である。

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