【アナリスト戦術記】ブラジル戦で露呈した“個人戦術”の差。遠藤航とカゼミーロでは何が違ったか?

2022年06月30日 杉崎健

運転技術を発揮するには「視野」が大事

ブラジルと対戦した日本は0-1で敗戦。スコア以上に内容では差を見せつけられた。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

 サッカーの奥深き世界を堪能するうえで、「戦術」は重要なカギとなりえる。確かな分析眼を持つプロアナリスト・杉崎健氏の戦術記。今回は"個人戦術"を取り上げる。

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 初回(柏レイソルの守備)と2回目(サガン鳥栖の攻撃)でチームの攻守をテーマにお届けしたが、今回は個人戦術にフォーカスしてみようと思う。このきっかけはいくつかある。まずは日本代表戦を見ていて思ったことであり、もう一点はアナリスト的思考を持つ人が増えてきたなかで違和感を覚えているからだ。

 6月のシリーズとして、キリンチャレンジカップとキリンカップの計4試合を行なった日本代表。結果は周知の通り、2勝2敗だった。すべて見たなかで、共通して感じたことがある。

 個人戦術の差とは何か、だ。個人技術は回答がすぐ出てくると思う。止める、蹴る、運ぶといった基礎動作から、パスやシュートなどの項目に分けてそのレベルがどうかといった具合に。戦術は、その名の通り戦う術であり、頭脳のことでもあると思う。その差とは何で分かれるのだろうかと。

 先日、事務所から自宅に帰る途中にふと感じたことがある。車の運転は、人によって違うなと。当たり前の話だ。荒い人もいれば、優しい人もいれば、緊張している人もいる。これは技術の差なのかと考えたのである。いや、もしかすると戦術に通じるものがあるのではないかと深く考察してみた。

 日本において車道で運転している人はみな、教習所で学び、免許を得て、車を買うか借りるかして乗っている。そうなると学んでいる内容は同じはずだ。改訂はあるものの、ほぼ同じ「教本」を見て学ぶ。
 
 それでも、公道では異なる運転技術を目にする。経験が違うから? 乗っている距離や回数が違うから? 取得した場所と運転している場所が違うから? それがそのまま戦術に通じるわけではないのだが、似た感覚を覚えた。運転技術を発揮するには、「視野」が非常に大事だということに。

 経験のある人は、常に前方の遠くを見ていると教習所で習った経験はないだろうか。経験が浅いとどうしても手前を把握するのに手一杯になるので、なるべく遠くを見るようにしましょうと。横や後ろから飛び出してくるかもしれないから、常に目視もして後方も確認しましょうと。似たような指摘を受けている免許保持者も多いのではないか。

 外から見ると、運転者の視野までは分かりづらい。首を振ってくれれば分かるが、目線だけで間接視野から把握できる人もいるため、外から運転手の視野をすべて見られる人はいないだろう。

 見えるのは車の挙動であり、それが運転技術によってなされていると判断する。だが実は、それをいかに発揮しているかは運転手の視野とそこから得ている情報量だと思う。
 

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