ジョーの獲得を巡り名古屋へ約3.5億円の賠償金を科された名門コリンチャンスが危機!当の選手は電撃退団、クラブは借金まみれで迫る支払い期限に…【現地発】

2022年06月22日 リカルド・セティオン

45日以内の支払いが科された

20年4月に名古屋を退団し、2か月後にコリンチャンスに加入したジョー。(C)SOCCER DIGEST

 元ブラジル代表FWのジョーが契約期間中にもかかわらず名古屋グランパスに無許可で帰国し、その後古巣のコリンチャンスと契約を結んだ時、多くのブラジル人は簡単に辞めさせてくれた日本のチームの寛容さに驚いた。日本人は人と争うのが好きではないから、こういうわがままも受け入れたんだろうかと噂しあっていたものだ。

 しかしそれは違った。名古屋はジョーの契約不履行をFIFAの DRC(紛争解決室)に訴え出て、FIFAは2020年の11月にジョーとコリンチャンスの双方に340万ドル(約4億6000万円)の賠償金を払うよう命じた。これに納得できない両者はCAS(スポーツ仲裁裁判所)に訴え出る。そしてこのほど判決が出て、賠償金は260万ドル(約3億5000万円)にまで下がったが、その代わり45日以内の支払いが科された。

 これに一番不満を抱いたのはコリンチャンスだ。自分たちも被害者だと感じている彼らの言い分はこうだ。

「ジョーの契約不履行により、名古屋が契約解除したのは2020年4月末、しかしコリンチャンスがジョーと契約をしたのは6月。すでにジョーはフリーの身でコリンチャンスは何の違反も犯していない」
 
 おまけにそのジョーはつい先日、怪我の治療中にバーで騒ぐのを目撃され、その後、自ら退団している。彼がコリンチャンスを出ていないのが、6月9日。CASの判決が届いたのが6月19日。つまり、もういない選手のために金を払わなければいけないのだ。もしこの日付が反対であったならば、コリンチャンスはジョーを簡単には辞めさせなかったかもしれない。

 コリンチャンスにも賠償金が課せられたのは、「係争中の選手と契約したことには責任がある」としたFIFAの決定を(コリンチャンスに言わせるとFIFAが勝手に決めつけた理由)をCASが支持したからである。

 私は最初、コリンチャンスがジョーとの契約時に、彼の連帯保証人になっているのだと思っていた。つまりジョーが何らかの支払いを命じられ、彼がそれを実行不可能な場合はコリンチャンスがそれカバーするという契約だ。しかしコリンチャンスは一切そうした書類にサインはしていないという。ただ何かあったら助けてやるとは言っていたらしい。

 なんといっても、コリンチャンスで育ったジョーはチームのスターだった。それに移籍時には彼の代理人が、係争では勝算が大きいから問題はないと、コリンチャンスに思いこませていた節もある。それを軽く見てジョーと契約したのは過ちだが——。

 ジョーが名古屋を退団することになったのは、ブラジルへの無断帰国が引き金だったが、当時世界はパンデミックの真っ最中だった。彼と妻は子供をブラジルの祖父母のもとに置いてきており、国境が閉鎖される前に子供のところへ帰りたかったという。

 当時はリーグ自体がストップしていたため、チームには迷惑をかけていない。そして帰国すると連絡した矢先に契約を解除された、もらえるはずだった春のボーナスも受け取っていない。これらがジョーの主張だ。CASの判決というものは、たいてい3か月ぐらいで出るものだ。しかし今回のケースでは2021年11月に審議が始まってから、結果が出たのがこの6月。つまり半年以上かかっている。それだけ複雑な問題ではあったようだ。

次ページジョーが丸投げすれば、コリンチャンスがすべてを背負うことにもなりかねない

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