控えを受け入れるか、退団するか。シャビ監督の要求を拒否したピケ。「レギュラーの座を脅かす補強はしない」という暗黙のルールも…【現地発】

2022年06月17日 エル・パイス紙

残留を希望する場合、残された道はただ一つ

ピケ(左)に厳しい要求を突き付けたシャビ(右)。(C)Getty Images

 バルセロナのジェラール・ピケの去就が騒がしくなってきた。きっかけは、2週間前のシャビ監督との2者会談だった。その場でピケは新シーズン、チーム内での役割がドラスティックに変わると宣告された。

 昨シーズン、怪我に悩まされたコンディション面に加え、指揮官が問題視しているのがサッカーとの向き合い方だ。ピケはピッチ外で実業家としてのもう一つの顔を持っているのは周知の通り。一部では、退団を強要されたという説も流れているが、クラブ関係者は、シャビが迫ったのは控えとしての立場を受け入れてバルサに留まるか、退団に踏み切るかの二者択一だったと強調する。

 しかしピケはその指揮官の提案を拒否。怪我を完治させ、ベストコンディションでプレシーズンキャンプに臨むことを誓った。
 
 ピケの去就においてもう一つ重要な問題がある。高額の年俸だ。しかも2020年のパンデミックを境に支払いを先延ばしにすることで双方が合意し現在に至っているが、その未納額はすでに約5000万ユーロ(約65億円)に達している。つまりこれ以上、支払いを先延ばしにしてもらちが明かない。ピケが残留を希望する場合、残された道はただ一つ、大幅な減俸に同意することだけ。それがクラブの考えだ。

 バルサは今夏、アンドレアス・クリステンセンの獲得にすでに合意している。またセビージャのジュル・クンデかナポリのカリドゥ・クリバリに狙いを定めてもう1枚のCBの獲得に動いている。現在のバルサは、リオネル・メッシがエースとして君臨していた数年前のチームに比べて、個で打開できるアタッカーが不足している。そのことを誰よりも憂慮するシャビは一線級のCBの獲得をフロントに要望しているわけだ。

 さらに4月に契約を延長したロナルド・アラウホと昨夏加入したエリク・ガルシアも控え、シャビの青写真通り補強が実現すれば、当然、ピケの立ち位置は難しくなる。昨シーズンは、ピケは怪我を押して試合に出場することを余儀なくされた。すべてはチームの厳しい台所事情がそうさせていたのだが、クラブ関係者は、「監督は同じリスクを冒すことを望んでいない。ピケはレギュラーを剥奪され、チーム内の序列が下がったことを理解している」と事の顛末を語る。

 近年、ピケがバルサで主役を演じたのはピッチ内だけに留まらなかった。ジョゼップ・マリア・バルトメウ前政権下では、楽天とのメインスポンサー契約締結の橋渡し役を買って出るなど、その影響力は拡大する一方だった。2018年にはハビエル・マスチェラーノとアンドレス・イニエスタの退団を境に第3キャプテンに就任。同年開催されたロシアW杯を最後にスペイン代表を引退し、バルサでのプレーに専念する環境が整っていた。

 昨シーズン、ピケがコンペティティブさやソリッドさを失ったわけではない。しかし強行出場の無理がたたってレアル・ソシエダ戦やマジョルカ戦では途中交代を余儀なくされ、そしてシーズン終了後、シャビはその"ギャンブル采配"に終止符を打つ意向を固めた。
 

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