なぜU-21日本代表は韓国に圧勝できたのか。ライバル撃破、2つの要因は「マネジメント」と「スカウティング」

2022年06月13日 松尾祐希

誰がピッチに立ってもチーム力は全く落ちなかった

日本は“2歳年上”の韓国に完勝。逞しい戦いぶりで4強進出を決めた。(C)2022 Asian Football Confederation (AFC)

 誤解を恐れずに言えば、戦前は僅差で決着がつくと予想していた。尻上がりに調子を上げてきたU-21日本代表であっても、2歳年上でベストメンバーに近いU-23韓国代表から勝利を挙げるのは容易ではない。少なくとも劣勢を強いられるなかで、いかに勝機を引き寄せるかがポイントだと見ていた。しかし――。

 現地時間6月12日に行なわれたU-23アジアカップの準々決勝で、日本は3−0で韓国を下し、ライバルにつけ入る隙を与えずに準決勝進出を決めた。

 終わってみれば、日本が全ての面で韓国を上回っていた。相手に押し込まれたのは後半の開始15分と終了間際の時間帯だけ。ほとんどの時間で日本が主導権を握っている。では、なぜ日本は韓国を圧倒できたのだろうか。

 要因はふたつある。1つ目がマネジメントの部分だ。今大会、大岩剛監督はメンバーを固定せずに戦ってきた。その理由は選手のコンディションに差があったからだ。

 GK小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)、DF内野貴史(デュッセルドルフ)、CBチェイス・アンリ(シュトゥットガルト)、MF斉藤光毅(ロンメルSK)といった欧州組の選手はシーズン後に短いオフを挟んで合流し、国内組もMF藤田譲瑠チマ(横浜)ら数人は1日遅れて日本を経った。

 そうした背景を踏まえ、大岩監督は選手の状態を上げながら勝利を目ざす布陣を組んだように思える。大会前から調整に苦慮していた斉藤をUAEとの初戦で45分出場させ、試合を通じてコンディションを上げる策を取った。

 チェイス・アンリも4月に移籍が決まった影響で、最後に試合を戦ってから3か月が経過していたが、実践感覚を取り戻すために同じくUAE戦でピッチに立たせている。
 
 グループステージ突破が懸かったタジキスタンとの3戦目では、10名の選手を前の試合から入れ替え、3試合を通じてGKの佐々木雅士(柏)以外の22名は出場機会を得た。

 選手ファーストのマネジメントを施しつつ、勝負所の決勝トーナメントに標準を合わせる。そうした起用法が韓国戦の結果に結びついた。試合当日にコンディションの問題でCB鈴木海音(栃木)が欠場を余儀なくされたが、3戦目で大会初出場を果たしていたCB馬場晴也(東京V)が安定感のあるプレーで最終ラインを統率。「晴也はあれだけのプレーができ示してくれた」と大岩監督が賛辞を送った通り、誰がピッチに立ってもチーム力は全く落ちなかった。

 逆に韓国はコンディション不良や怪我で3名が欠場。特に3試合連続でフル出場していたCBイ・サンミンの不在は大きく、代わりに起用されたCBキム ・ヒョヌは今大会初出場で明らかに試合勘が落ちていた。先を見据えたマネジメントが韓国戦に生きたのは間違いないだろう。
 

次ページ「臨機応変にプランBまで用意していた」(大岩監督)

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