実績十分の吉田麻也も安泰にあらず。「自分自身の価値を示さなければいけない」と語気を強めるキャプテンの現在地

2022年06月12日 元川悦子

「何か良い案があれば、教えていただけませんか?」

6月シリーズのここまで3試合はすべて先発。14日のチュニジア戦でもリーダーに相応しいパフォーマンスを期待したい。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

「今回のカタール・ワールドカップ(W杯)は、9月の活動が実質、直前合宿のようなものになる。6月が最後のアピールの場になるんじゃないかと思ってます」

 日本代表のキャプテン・吉田麻也(サンプドリア)がこう語ったように、6月のインターナショナルマッチデー(IMD)に4試合が組まれた今シリーズのラストとなる14日のチュニジア戦は最終サバイバルの場。11日に全体練習に復帰した冨安健洋(アーセナル)含め、ここまで十分にパフォーマンスを発揮しきれていない面々にとっては、結果と内容の両方が求められる重要な一戦だ。

 ここまでの全3試合に先発し、6日のブラジル戦(0-1)はフル出場、2日のパラグアイ戦(4-1)と10日のガーナ戦(4-1)でそれぞれ45分プレーした吉田自身も、確固たる手応えを掴んだ状態で今回の活動を終えたいところ。

 というのも、彼は2020年1月から2年半プレーしたサンプドリアとの契約が今月末に満了となるため、新天地を見出さなければならないからだ。

「(IMDの)2週間で動きがあるのかどうかはエージェントに任せてますし、まあ、なるようになるでしょう。むしろ何か良い案があれば、教えていただけませんか?」と、5月31日のオンライン取材で吉田は冗談交じりに語っていた。欧州で出番を得られる新たな環境を見出せるか否かは、自身3度目となるW杯の成否を大きく左右する。
 
 2014年ブラジル大会、2018年ロシア大会をともに戦った長友佑都(FC東京)、酒井宏樹(浦和)、大迫勇也(神戸)が昨年相次いでJリーグ復帰を決断。それぞれの場で奮闘しているが、長友が今季開幕から控えに甘んじたり、酒井と大迫が怪我を繰り返すなど、彼らの状況は必ずしも芳しいとは言えない。Jリーグのレベルが年々上がっているとはいえ、世界基準の強度や激しさ、迫力にはまだ遠いと言わざるを得ないところもある。

 カタール本大会でドイツのティモ・ヴェルナー(チェルシー)、スペインのアルバロ・モラタ(ユベントス)のようなトップFWと対峙することを考えると、吉田にとって国内復帰は不利。やはり何としても欧州残留を果たすことが肝要だ。

 代表での守備陣の競争を考えても、アーセナルのレギュラーである冨安が長期離脱から復帰。板倉滉もシャルケからハイレベルのクラブへの移籍が濃厚だ。CBをこなせる長身レフティ・伊藤洋輝(シュツットガルト)も一気に存在感を高めるなど、CBの人材は何人かいる。W杯過去2回出場、国際Aマッチ117試合という高度な実績を持つ吉田といえども、うかうかしてはいられない部分があるのは確かだろう。

 とはいえ、ご存じの通り、彼には類まれなリーダーシップや発信力、人間的な器など、今の代表に不可欠な要素が複数ある。ちょうど4年前のロシアW杯で8年間キャプテンを務めた長谷部誠(フランクフルト)が代表引退を決断した際、「自分がどうあがいても長谷部誠にはなれない」と号泣。その涙は我々報道陣の心を揺さぶった。
 

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