【横浜】中澤も「やっぱり俊がいないとダメだね」。“完全復活”は間近。今季初の4連勝に導いた中村俊輔の凄味

2015年08月30日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

ゴールショーの幕開けと締め括りをその左足で演出。

直接FKによるゴールは、自身が持つ記録を更新するJ1通算19得点目。放たれたボールは立ちはだかる壁をあざ笑うかのような見事な軌道を描き、ゴールに吸い込まれた。写真:田中研治

 電光掲示板に映し出された映像に、中村は一瞥もしなかった。
 
 第2ステージ・3節のG大阪戦。1-2で迎えたアディショナルタイム、中村の芸術的なFKがチームを敗戦から救う。千金に値するそのゴールは7月の月間ベストゴールに選ばれ、選考委員会の総評では「コース、スピード、タイミングなどすべての要素を満たした素晴らしいキック。世界最高クラスのGKでも防ぐことは難しいと思われる、何度観ても美しいゴールであった」と賛辞を送られている。

【J1 PHOTOハイライト】2ndステージ・9節
 
 試合前の受賞セレモニーのなかで当時のシーンが流されていたのだが、腕章を巻いた背番号10は、すでに目の前の浦和との戦いに集中力を高めていたのかもしれない。そして、キックオフ前に自らの活躍が称えられたそのゲームで、再び直接FKを決めてしまうのだから、改めてこの稀代のキッカーの凄味を感じずにはいられなかった。
 
 伏線はあった。13分には高精度のCKでファビオの決定的なヘディングシュートを演出している。これで感触は掴んでいたのだろう。もともと、「(今季使用されている)ボールとは相性が良い」と言う。
 
 迎えた28分。アデミウソンからのパスを受けた中村は、相手のファウルを誘うようなドリブルを仕掛けると、浦和の阿部がその罠にハマり、FKを得る。
 
 ゴールに向かってほぼ正面。ペナルティアークから少し離れた位置にボールがセットされる。「ペナから1~2メートルぐらい壁が後ろのところが一番良いかな」という、まさに得意とする距離である。
 
 そして、左足から放たれたボールは、ジャンプする赤い壁を軽やかに乗り越え、GK西川が懸命に伸ばした指先に触れることなく、鮮やかにネットを揺さぶった。
 
「ちょっと擦り上げて当てる感じ。足に上手く乗っかった。あとはやっぱり、ここ(日産スタジアム)は芝が良いというか、土が良い。足が(良い具合に)入っていくから、その分、下から当てられる」
 
 まさに"コース、スピード、タイミングなどすべての要素を満たした"見事なゴールだった。ほんの30分前には、G大阪戦で決めたFKがリプレイされたばかり。その余韻も残るなかで、周囲の期待に応えてみせる快心の一撃に鳥肌が立った。
 
 8月の月間ベストゴールにもノミネートされたこの一発でリードを奪った横浜は、最終的に4-0の完勝を収めるのだが、中村の先制弾で幕を開けたゴールショーは、最後も中村の左足で締め括られる。
 
 CKのチャンスに勢い良く飛び込んだファビオが頭で豪快に押し込む。前半は西川のファインセーブに阻まれたが今度は決めてみせた。CKのキッカーはもちろん、中村だった。
 
 武器であるセットプレーで1得点・1アシスト。「セットプレーはチームとしてもっと突き詰めてやっていきたい。ずっと攻められていても、"俺ら負けていないよ、これあるし"みたいに、ポジティブでいられる」と語るが、中村の存在価値はそれだけではない。

次ページ自分なりのビジョンと適応力を示し、なおかつ結果を出す。

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