【横浜】当事者が語る“破竹の4連勝”の舞台裏――「ボールを取った後に“矢”がある」(中村)

2015年08月30日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

「守っているけど、奪ったらこっちのほうが有利だよ、という展開を作りたかった」(中村)

33分に巧みな裏への抜け出しからGKとの1対1を冷静に沈めた齋藤は、59分にはカウンターからコントロールショットでネットを揺らす。2得点の活躍でチームを勝利へと導いた。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 第2ステージに入り、最初の5試合で2分3敗と低調な滑り出しだった横浜だが、同ステージ6節・名古屋戦(○3-0)を皮切りに、7節・甲府戦(○2-0)、8節・鳥栖戦(○2-1)と3連勝を達成。迎えた今節の浦和戦では、現在の好調ぶりを示すような攻守に盤石の戦いぶりで、4-0と第1ステージ王者を粉砕してみせた。

【J1 PHOTOハイライト】2ndステージ・9節
 
 ラフィーニャの負傷を受け、ここ2試合はCFで先発している伊藤は、勝利を噛み締める。
 
「とりあえず、勝ってなにより。相手が浦和ということで、みんな気合いが入っていたと思うし、それがそのまま結果に反映された。ここで4連勝できたのはデカい」
 
 身体を張った守備で無失点に貢献するだけでなく、セットプレーからダメ押しとなる4点目をヘッドで叩き込んだファビオは、白星を重ね続けているチーム状態を簡潔に語る。
 
「チーム全体で自信を取り戻せている」
 
 2ゴールを挙げた齋藤は課題を挙げつつも、確かな手応えを感じているようだ。
「個人的には、最後まで攻める姿勢をもっと見せていきたかったですけど、4点取れたのは大きい」
 
 1試合で4ゴールは今季初。リーグ戦に限れば、13年の2節・清水戦以来(○5-0)となる快挙だ。また、浦和戦の得点パターンを振り返れば、直接FK、裏への抜け出し、カウンター、CK。バラエティに富んだゴールが攻撃面の充実ぶりを物語っている。
 
 複数人が絡んだ連動性ある崩しも板についてきた。10分には中町の縦パスをアデミウソンがスルーし、受けた伊藤がヒールで後方に流したところにアデミウソンが走り込んで惜しいシュートを放つ。41分には下平のパスを中村がダイレクトで落とし、3人目の動き出しで足もとに収めた齋藤がスルーパスを通して伊藤が左足を振り抜く。どちらもゴールには結びつかなかったが、息の合ったコンビネーションでチャンスを作り出していた。
 
 献身的なポストプレーと安定感のあるキープ力で前線の起点となった伊藤に言わせれば、距離感がカギだったようだ。
 
「学やアデミウソンとも距離が離れずにできたので、僕としてもやりやすかった。涼しくなったことでより動けるようになってきたし、(プレーに関与しようとする)一歩、二歩がすごく大事ですけど、それがちゃんと出せるようになってきた。それで上手く連動できているのではないかと思いますね」
 
 攻撃の中心的役割を担った中村の戦術眼も見逃せない。「守っているけど、奪ったらこっちのほうが有利だよ、という展開を作りたかった」という背番号10は、「なるべく自分が柏木くんにつくことで」浦和のボールの流れにノッキングを起こさせようとした。その結果、2列目両サイドの齋藤やアデミウソンの守備の負担も軽減され、奪った後の速攻にも威力が生まれた。
 
「ボールを取った後に"矢"がある。そういうポジティブな気持ちで守れる形にしたかった」(中村)
 
 前節に続き、トップ下で先発した男の存在価値は、先制点を決めた直接FKやファビオのゴールをアシストしたCKといったセットプレー以外でも存分に発揮されていた。

次ページ「周りに相手が10人ぐらいいるんじゃないかというふうに感じていた」(興梠)

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事