「2列目にタレントを並べても速攻が主体」日本代表のパラグアイ戦をW杯対戦国スペインの記者はどう見たのか。「印象に残った選手は…」

2022年06月05日 ダビド・フェルナンデス

日本が支配できる、いや支配すべき試合だった

パラグアイ戦ではインサイドハーフで起用された鎌田。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

 まずこの一戦の分析を始める前に、国際親善試合である点を強調しておく必要がある。しかも相手のパラグアイはワールドカップ南米予選を8位で終え、チーム状況は芳しくない。日本が支配できる、いや支配すべき試合だった。

 森保一監督が "石工型"ではなく、"芸術型"の選手を中盤に並べたのも、そうした相手との力関係を考慮したのかもしれない。そして日本は4-1で大勝した。しかも内容も説得力があるもので、選手たちが楽しそうにプレーしている姿が印象的だった。

 サッカーはゴール前の攻防が勝ち負けに直結するスポーツだ。日本代表について海外のメディアからよく指摘されるのがその点におけるひ弱さだ。そんな中、森保ジャパンのその試合におけるチームとしての狙いを示す指標は中盤、とくにインサイドハーフの人選にある。

 これは決して矛盾しているわけではない。なぜなら指揮官は、守備を意識してプレッシングの効くハードワーカーを選ぶことも、攻撃に比重を置いてテクニシャンを選ぶこともできるからだ。彼らはW杯予選中、前者の布陣に慣れ親しんでいた。実際、6日に対戦するブラジル代表のような相手には守備重視のゲームプランで臨むのが定石であり、その首尾一貫した戦い方が功を奏し、予選突破にも成功している。

 しかし、森保監督はパラグアイ戦では後者を選択し、原口元気と鎌田大地をスタメンで起用。2人はその期待に応え、左右ウイングの三苫薫と堂安律とともにファイナルサードで躍動した。原口は2アシスト、鎌田はポスト直撃のシュートとPK奪取を呼ぶスルーパスに加え、1得点1アシスト、堂安は1アシスト、三苫は1得点といずれも得点に絡む活躍を披露。今後、プレースタイルや中盤の人選を巡る論争が活発化していきそうだ。
 
 注目に値するのは、CFとして先発出場し、全体的にそつのないプレー見せた浅野拓磨の背後にこの4人のタレントが並んでいたにもかかわらず、チームの戦い方は大きく変わらなかったことだ。ボール保持率はいつもより高かった印象があるが、相手の守備組織が整う前に手数を掛けずにゴールに迫る速攻がメインであり続けた。それはボール奪取からシュートに至るまでのパスの本数に表れていた。

 例えば、10分過ぎの鎌田のポスト直撃のシュートや浅野の先制ゴールは、いずれも少ないパスでフィニッシュまで持ち込んだものだった。一方、じっくりパスを回しつつ攻め手を探る遅攻からは、なかなかチャンスを作ることができなかった。

 原口と鎌田は、熟練度という点では常時スタメンで起用されてきた守田英正と田中碧と比べると見劣りはしたものの、同じようにプレスに奔走し、何本か前線へ質の高いパスを送り込み、自らもフィニッシュに絡んだ。

次ページシュミットは体格の割には俊敏性に優れ、ハイボールの処理も落ち着いていた

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