「大人しすぎる」主将として批判を浴びた遠藤航が“自身の流儀”で伝説となった日。「ワタルは僕らの象徴」【現地発】

2022年05月26日 中野吉之伴

超満員のスタジアムは大きくどよめいた

最終節に劇的な決勝弾を叩き込んだ遠藤。(C)Getty Images

 アディショナルタイムでの逆転ゴールがクラブを瀕死の状態から救う。劇的という言葉でも足らないくらいの衝撃的な得点でシュツットガルトを1部残留へ導いたのが、日本代表MF遠藤航だ。

 33節終了時でシュツットガルトは2部3位との入れ替え戦に回る16位。15位ヘルタとは得失点差で有利に立ってはいるものの、勝点差は3。つまりヘルタが負け、シュツットガルトが勝利するしか、逆転での1部残留の可能性はなかった。

 前半のシュツットガルトは1点を奪い、その後も何度もビックチャンスを作り出せていた。だが、どうしても2点目が奪えない。遠藤もボアナ・ソサからのクロスにフリーで合わせた33分とコンスタンティノス・マブロパノスのシュートのこぼれ球に反応した35分とで続けざまにゴールチャンスに絡んだが、どちらもバーを直撃した。
 
 ペジェグリーノ・マテラッツォ監督も「前半のうちに2点目を決めておかなければならなかった」と振り返っていたが、チャンスをいかせずにいると、どこかで相手にゴールを許すというのはサッカーにおける不文律だが、まさに何でもないところから同点ゴールが生まれてしまった。

 サイドからのクロスをGKフロリアン・ミュラーがまさかのキャッチミス。点取り屋アンソニー・モデステが素早く反応してゴールを決めたのだ。他会場のヘルタはドルトムントと同点をキープ。終盤までシュツットガルトは入れ替え戦の準備に動き出さなければならないような状況だった。

 だが、サッカーは何が起こるかわからない。特にリーグ最終節では本当に思いもよらない展開が現実のものとなる。まずヘルタがドルトムントにリードを許す報が入った。スタジアムの大型モニターに映し出された「ドルトムント2-1ヘルタ」をみた超満員のスタジアムは大きくどよめき、歓声が上がり、チームへの声援ボルテージが何倍にも上がった。1点取って勝てば残留というとても分かりやすい図式になったわけだ。

 とはいえ、相手のケルンも勝てばヨーロッパリーグ出場権獲得の可能性を残している。真っ向勝負の激しい戦いはどちらも最後の決め手を欠きながら終盤へ突入する。

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