「柏の時は攻撃重視だった」中山雄太がなぜ“守備職人”になりえたのか。オランダでの成長とズウォーレ降格への思いを語る【現地発】

2022年05月16日 中田徹

「チームを苦しめるような言葉ではなく、ずっと温かな言葉をかけてくれた」

ズウォーレは降格したが、主力として奮闘を見せた中山。(C)Getty Images

 前節のスパルタ戦に負けて2部降格が決まってしまったPEC(ペック)ズウォーレだったが、最終節のホームゲームは穏やかなムードに包まれていた。開幕から不振を極めていた頃のピリピリした空気とは大違いだ。

 開幕から17節まで、わずか勝点6で最下位だったズウォーレは、18節からの後半戦で21ポイントを稼ぎ、一時は降格圏から脱出するなど右肩上がりの成長を見せた。その間に、チームとサポーターやファンの間に共感が生まれ、たとえ敗色濃厚の試合でも監督と選手を信じる空気が醸成された。

 負けて許されなかったのはゴアヘッド・イーグルスとのダービーマッチだけ。これほどサポーターのフラストレーションを感じない降格圏のチームはないだろう。彼らは降格が決まっても優しかった。

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「降格が決まってしまったとき(スパルタ戦)は、すごく温かい言葉をかけてくれました。翌日、『(最終節の)PSV戦はチームをサポートしてくれた人たちに対して、僕たちは全力で試合をしよう。勝利を目指して頑張ろう』と監督と話をしました。今日、スタジアムに来るとサポーターがたくさんいていい雰囲気を作っていただいた。試合が始まる前、終わってからも『まさにこれがサッカー』じゃないですけれど、PECズウォーレを通じてやはり深いものを感じました」

 そのPSV戦を1-2で落とし、サポーターへの感謝の勝利を届けることができず、悔しさをにじませながらも、DF中山雄太はしんみりと語った。

「今シーズンは苦しい時期が多かった。おそらく、サポーターは少なからず『もっとやれよ』と思っていたはずです。そこで、さらにチームを苦しめるような言葉ではなく、ずっと温かな言葉をかけてくださった。チームが厳しかった状況の中で、それはエネルギーになりました。

 前半戦だけで見れば他のチームもメディアも『僕たちが落ちる』という認識だったと思う。最後まで(残留争いを)もつれこませたというのは、"僕らが作り上げたもの"プラス"サポーターの情熱"だったりした。僕らは全力でやっているだけ。それにブースターをかけたサポーターの後押しというのは間違いなくあったと思います」

 長年、ポゼッションサッカーを積み重ねてきたズウォーレは、ホッフェンハイムでコーチの経験を持つディック・スフローダー監督の就任によって4-3-3から3-5-2にシステムを変更し、ゲーゲンプレッシング戦術に大きく舵を切った。リベロに抜擢された中山は、ヘディング、カバーリング、フィード、攻撃参加などで新システムを支え、後半戦で盛り返しを見せたチームの牽引役の一人となった。

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