「すべきことはやれた」左SBでタスク完遂の冨安健洋。試合後に語ったアーセナルで描く青写真「2~3年後に世界のトップと呼ばれるクラブに──」【現地発】

2022年05月11日 田嶋コウスケ

リーズ戦ではアーセナル加入後初めて左SBでプレー

サプライズ起用ながら、左SBで高いクオリティを発揮した冨安。(C)Getty Images

 アーセナルの冨安健洋が突然、左サイドバックで出場した。
 
 5月8日に行なわれたリーズ戦。アーセナルのDF冨安はふくらはぎの怪我から復帰後、2試合連続で先発メンバーに名を連ねた。英公共放送『BBC』は試合前の予想フォーメーションで「右SB」を予想していたが、蓋を開ければ「左SB」でスタート。これまでプレーしてきた右サイドから、左サイドにポジションを移したのだ。

 驚きの采配ではあったが、思い返せば伏線はあった。ミケル・アルテタ監督は先月29日の記者会見でスコットランド代表DFキーラン・ティアニーの負傷離脱で手薄になっている左SBについて言及。「獲得前にトミ(冨安)を追っていた際、我々は左SBとしても彼を考えていた。今も左SBの候補であり、多くの解決策をもたらしてくれる。彼には非常に多様性がある」とし、冨安を左SBで起用する考えがあると明かしていた。

 そして、実際に冨安を左サイドで起用したリーズ戦後、指揮官は、同サイドで対峙するブラジル代表MFラフィーニャを抑えるための対抗策だったと明かした。選手批判につながるので言及はされなかったが、サプライズ起用の裏には、左SBの控えであるヌーノ・タバレスが守備で心許ないプレーを見せていた影響もあったのだろう。

 そんな指揮官の期待に、冨安は堅実な守備で応えた。
【動画】「無謀」「不快だ」リーズDFの危険な両足タックルに冨安が珍しく激昂!
 試合後のミックスゾーンで冨安本人が「代表では左センター(バック)をやっていますし、しっかりと自分のすべきことはやれたのかなと思います」と語ったように、プレミアリーグで初めて左SBでプレーしたとは思えないほど落ち着いたプレーを披露。力強い守備でラフィーニャに仕事をさせなかった。

 23歳のサムライ戦士は「(右サイドでプレーしている)いつもと景色は違いました。特に守備対応のときの前足が逆になったりとか、あとはロングボール(の対応も違った)。最後に一本、CKになってしまったところも慣れないところがありました」と不慣れなところがあったと認めていたものの、サプライズ起用であったことを踏まえれば、称賛に値するパフォーマンスだった。

 英メディアも軒並み高い評価を与えており、地元紙『ロンドン・イブニング・スタンダード』と英サッカーサイトの『フットボール・ロンドン』は、チーム最高点タイとなる8点(10点満点)をつけた。

 取材を終えて改めて感じたのは、冨安の底知れぬポテンシャルだ。当たりが激しく、試合展開も異様なほど速いプレミアリーグは、外国人選手にとって適応が難しいとされる。ところが、日本代表DFは昨年9月のデビュー戦から瞬く間にフィットし、来季チャンピオンズ・リーグ(CL)出場圏内につけるアーセナルの大きな力になっている。

 しかも、勝点3が絶対に必要とされたリーズ戦で不慣れな左SBで出場し、確かな守備で2―1の勝利に導いた。戦術面から見ても、対戦相手に応じて冨安を左右の両サイドで起用できる目処がついただけに、存在価値をさらに高めたと言えよう。試合ごとにタスクをこなして加速度的に成長を遂げており、ここからどこまで進化していくのか本当に楽しみでならない。

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