プロ化した日本女子サッカーリーグが示した確かな成長。WE初代女王I神戸の指揮官は「今は1-0でもつまらない試合はない」

2022年05月09日 西森彰

「一戦一戦に、良い準備をして戦った」(中島)

WEリーグ初代女王に輝いたI神戸。18戦15勝2分1敗と、盤石の強さで戴冠した。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 5月8日、相模原ギオンスタジアムで、WEリーグの初年度女王が誕生した。

 日本の女子サッカー界の頂点に返り咲いたのが、INAC神戸レオネッサだ。2011、2012年のシーズンを無敗で制し、黄金期を作り上げた星川敬監督率いるチームは、2013年(この年は石原孝尚監督)以来、9年ぶりのリーグ制覇を果たした。

 昨年、9年ぶりに古巣へ戻ってきた指揮官は、まず、彼我の戦力を分析した。そして、前年度のなでしこリーグチャンピオン・三菱重工浦和レッズレディースと、皇后杯女王の日テレ・東京ヴェルディベレーザを追う立場と位置づけ、慎重な姿勢を崩さなかった。

 計算が立てやすい守備に注力して、開幕前のプレシーズンマッチを無失点での4戦全勝で終えると、タイトルから遠ざかっていたチームに自信が植え付けられた。

 10年前の黄金時代を知る髙瀬愛実は「星川監督が戻ってきた今、INAC神戸を知らない方に『どんなサッカーをするんですか?』と訊かれた時、シンプルに『強いサッカーです』と言える感覚がある」と全幅の信頼を表現した。
 
 その髙瀬のWEリーグ・ファーストゴールからI神戸の快進撃が始まった。守備陣は好セーブを連発する山下杏也加と、最終ラインを統率する三宅史織らを中心に指揮官の期待に応え、開幕から8試合連続の完封勝利につなげた。

 安定感抜群の戦いを続けるうちに、ライバルチームが徐々に星を落とし、ジリジリとリードが広がっていく。指揮官は「選手と私には『1強』で進んでいるという感じはなかった」と言うが、筆者が見る限り、大崩れにつながる危険性を感じたのは、皇后杯の敗戦と杉田妃和のアメリカ移籍を挟んで迎えた、ウインターブレイク明け初戦くらいだった。

「そういうターニングポイントや敗戦の後にしっかりと話し合い、立ち直る力が、このチームにはあった」と星川監督。キャプテンの中島依美も「目の前の一戦一戦に、良い準備をして戦った。それがこの結果につながっているのかなと思います」と振り返る。また、重苦しい空気が生まれると、そこに明るい雰囲気をもたらすチームスタッフの気配り、きっかけ作りもあったという。
 

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