【アナリスト戦術記】柏レイソルの下馬評を覆す要因となった守備戦術。「見る」ではなく「奪いに行く」優位性

2022年05月05日 杉崎健

中盤は形にこだわりすぎず相手の前進をけん制

11試合を消化し、勝点19で3位の柏。直近の広島戦は先制を許す展開も、2-1の逆転勝利を収めた。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 サッカーの奥深き世界を堪能するうえで、「戦術」は重要なカギとなりえる。確かな分析眼を持つプロアナリスト・杉崎健氏の戦術記。初回となる本稿では、柏レイソルの守備戦術をディープに掘り下げる。

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 毎年恒例となっている開幕前の順位予想。今季のJ1リーグは「ストップ・ザ・川崎フロンターレ」となると誰もが予想し、その対抗馬として、昨年のリーグ戦で上位となった横浜F・マリノス、ヴィッセル神戸、鹿島アントラーズらが軒並みそれぞれの有識者の予想覧で上位を陣取った。

 ところが、その内の神戸だけが、10試合を行なっていまだ1勝もできず、最下位に沈んでいる。これは予想しづらい展開だが、それもサッカーであり、強いチームや有名な選手が多く揃っているからといって必ず上位にくるわけでもない。

 1試合1試合の積み重ねが順位表に表われるが、その都度、どれだけ準備し、挑み、修正できるかである。このサイクルが循環しなければ、世界的に有名な選手を擁していても結果は出ない酷な世界だ。

 一方で、軒並み「下位予想」となったチームもあった。それは昨年の結果に加え、選手の移籍等を踏まえて考察されたはずで、どの有識者もおおむね似たような予想をしていた。ただ、上位予想が最下位になることもあるように、下位予想を覆すチームもある。

 何を隠そう、私も柏レイソルを下位に予想していたので、ファン・サポーター含む関係者に謝罪しなければならない1人だ。

 毎年、この手の驚きは起こる。昨年で言えば、7位フィニッシュとなったサガン鳥栖や、8位となったアビスパ福岡がその例として挙げられるだろう。もちろん両チームのサポーターたちは、はじめから上位予想していたはずだが、あくまで相対的な意見の範疇だ。

 いずれにしても、この両チームの戦績は素晴らしく、今季も期待するサッカーファンは増えたはずである。
 
 さて今回のコラムで対象とするのは、現状、その予想を覆そうとしている柏レイソル。執筆段階では11試合を行なって6勝1分4敗となっており、勝点は19で3位に位置している。特筆すべきはその守備力。試合数にばらつきがあるものの、9節終了時点での6失点はリーグで3番目に少なかった。10節の鳥栖に4失点を喫し、11節ではセットプレーから1失点を喫したため現在は失点数が増えたものの、それまでは堅守が売りになっていた。

 では、彼らの守備はいかにして構築されているのか。柏の守備戦術に特化して紐解いてみようと思う。

 彼らの守備陣形の基本は、1-5-3-2か1-5-2-3。ウイングバックが下がって5バックになるのは共通としながら、中盤や前線では、相手の特長に合わせて若干の変化がある。右サイドを任されることが多いマテウス・サヴィオが下がれば3センターハーフ化するし、その際は左の小屋松知哉が前に出て2トップ化する。M・サヴィオが上がれば3トップ化されてドッジと戸嶋祥郎の2ボランチ化となるなど、この中盤は形にこだわりすぎず相手の前進をけん制しているように見える。

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