【消えた逸材】「ポグバも霞むほどの天才児」は、やがて「最も才能を無駄にした悪童」に…。29歳の現在はルーニー監督の下で奮闘中!

2022年05月03日 ワールドサッカーダイジェスト編集部

スコールズよりもギグスよりも優秀な14歳

誰もが認める飛び切りの逸材だったラベル・モリソン。しかし、そんな天賦の才は虚しく浪費されてしまい……。(C)Getty Images

ラベル・モリソン(MF/ジャマイカ代表)
■生年月日/1993年2月2日
■身長・体重/175センチ・71キロ


 とにかく才能に恵まれていた。マンチェスター・ユナイテッドのユースアカデミーでは、同い年のポール・ポグバも霞むほどの天才児だった。

 御大アレックス・ファーガソンは断言した。
「ポール・スコールズよりも、ライアン・ギグスよりも、優秀な14歳だった」
 
 クラブOBでレジェンドのパディ・クレランドは舌を巻いた。
「ジョージ・ベスト以来のタレントだ」
 
 当時のユースチームのコーチ、ポール・マッギネスは手放しで褒め称えた。
「トッププレーヤーだけが持ちうるタイミングの感覚を備えていた。ボールをキープしながら、ここぞの瞬間にスルーパスを通し、相手を引き付けて、ここぞの瞬間に抜き去っていく」
 
 誰もが認める飛びきりの逸材、それがラベル・モリソンだった。
 
 そんな天賦の才は、しかし、虚しく浪費されてしまった。

「私が知る限り、最も才能を無駄にした選手だ」

 ウェストハムで指導した当時のサム・アラダイス監督がそう嘆息すれば、ラツィオで指揮した当時のステーファノ・ピオーリ監督は匙を投げた。

「プロ意識がまるでない。イタリア語を学ぼうとすらしなかった」

 生まれ育ったのは、マンチェスター郊外のウィゼンショウという町で、典型的な大都市郊外のラフな土地柄だった。ラベル少年は日々の生活を通して自然と反骨心を身につけ、傍若無人な振る舞いを繰り返すようになっていった。ユナイテッドのアカデミーに入っても、コーチの言うことを聞かなかった。そんな気分じゃないと、何度も練習をサボった。
 
 それでもファーガソンはその才能を信じ、フットボールに集中させようと手を尽くした。本人を呼び出し、1対1の膝詰めで直接諭したりもした。仲間が起こした強盗事件の証人を脅して起訴されても、元恋人への暴行で逮捕されても、むしろ寄り添った。見捨てるには惜しいタレントだったのだ。

 それでも、放出の決断が下された。2012年1月、決まったのはウェストハムへの移籍だった。ただ、これも本人のためを思ったファーガソンの計らいだった。環境の変化が心を入れ替えるきっかけになればという親心からアラダイスに託したのだ。しかし、問題行動は残念ながら改まらなかった。

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