ノルマ未達なら腕立て30回。指揮官スキッベの徹底したトレーニングの成果は如実に出てきている【広島】

2022年04月12日 中野和也

中に入っていた柴﨑、「来たな」と確信

福岡戦は劇的AT弾で1-0勝利。指揮官スキッベのもと、基本を徹底的に練習している広島が3年ぶりの3連勝を飾った。(C)J.LEAGUE

[J1第8節]広島 1-0 福岡/4月10日/エディオンスタジアム広島

 アリの這い出る隙もないような福岡の守備ブロックは、アディショナルタイムに入るとさらに堅牢さが増幅した。フアンマ・デルガドら前線の選手も含めて全員が守備に戻り、なりふり構わず勝点1を取りにきた。

 広島は、どうする。中に差し込んでも弾かれる。単純にロングボールを入れても、奈良竜樹とドウグラス・グローリは強い。ドリブルを仕掛けても難しい。打開策はないように見えた。

 だが、高い位置でボールを握った佐々木翔は、慌てていなかった。福岡が中の守備を固めてくればくるほど、サイドは空く。そう踏んでいた。

 「(誰かが)ワイドに開けば、フリーになる。その瞬間を待っていました」

 そのキャプテンの意図を理解したのは、この日はボランチで奮闘した東俊希だ。当初、左のハーフスペースにポジションをとった東は、左ワイドの柏好文が中に入り込んだ動きと連動して、外に出た。

 「(その瞬間)相手が自分を見ていないのはわかっていたので、絶対にフリーになれると思った」

 思惑どおりの動きをしてくれた東に、佐々木はパス。1タッチで前を向いた若者は、自信を持って左足を振り抜いた。精度抜群。動きながら中に入っていた柴﨑晃誠、「来たな」と確信。「ボールだけを見て反応しました」。
 
 ダイビングヘッド!!

 この日、PKを止めるなどの大活躍を見せていたGK村上昌謙も、止められない。時間にして93分43秒。ほぼラストプレーの劇的ゴールで、広島は3年ぶりの3連勝を飾った。アディショナルタイムでのゴールで勝利したのは2017年9月23日の対清水戦(パトリック、フェリペ・シウバ)以来。ホームでは2015年10月17日の対川崎戦(山岸智)以来、7年ぶりとなる。

 では、なぜ広島は攻略不可能と思われた福岡のブロックから得点をとることができたのか。そのキーワードは「トレーニング」である。

 広島は今季、ミヒャエル・スキッベ新監督のもとで、前線からのゲーゲンプレスを軸とする戦術に取り組んでいる。強度が高くリスクを厭わないプレッシングは相手の脅威となり、第7節の対横浜戦ではボール支配率では40%を切りつつも、プレーエリアの51%がアタッキングサードというゲームを演出し、横浜をシュート4本、得点も決定的シュートもゼロという圧巻の内容を見せ付けた。
 

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