最終予選を終えて――回復の軌道へ乗せた伊東、田中、守田。今後の焦点はJ復帰のベテラン勢の見極め

2022年03月30日 加部 究

裏返せば変化を好まない慎重居士だ

W杯出場は果たした。森保監督にとって残された重要な課題は、極限の負荷がかかる短期決戦への対策だ。写真:田中研治(サッカーダイジェスト/JMPA代表撮影)

 結果的には序盤の躓きが変革をもたらし、チームを好転させた。もし最初に1勝2敗と崖っぷちに立たされなければ、おそらく森保一監督は従来の4-2-3-1から脱皮できていない。

 吉田麻也主将が「絶対にぶれない」と評す指揮官は、裏返せば変化を好まない慎重居士だ。ワールドカップへの道が閉ざされるかもしれない正真正銘の危機的な状況に追い込まれなければ、発想の転換もメンバーの入れ替えもなかったはずである。

 こうして田中碧と守田英正をインサイドハーフに組み込んだ4-3-3の選択に踏み切ったホームのオーストラリア戦は、大きな分岐点となった。田中は新天地に慣れる時間を提供しようと考えたのだろうが、最初は招集さえ見送っていたし、守田も柴崎岳の控えとして終盤の限定的な起用に止まっていた。

 だが最終予選を戦い終えてみれば、もはや遠藤航を底辺とした田中と守田が流動的に補完し合うトライアングルは、代えの効かない組み合わせになった。森保監督の2人への信頼の厚さは、ベトナム戦の采配でも見て取れた。生真面目な指揮官は珍しく多分に実験的なスタメンを送り込んだが、やはり予選最終戦でもチャレンジより勝利を優先した。
 
 そして1点を追いかける状況で選択したのが、田中と守田、そして南野拓実を含めた3枚代えだった。実際ベトナム戦でも、田中と守田がウイングやSBと適度な距離を保ち連係のスイッチを入れることで、明らかに崩しのバリュエーションは広がった。

 また新戦術を追い風に、日本代表を窮地から救い上げたのが伊東純也だった。ややポジションを上げ、ワイドに幅を取る役割が定着したこともあり、毎試合確実に縦への仕掛けで主導権を握り決定的な仕事を連ねた。

 苦しんだ最終予選で日本代表を回復の軌道へ乗せた主役を絞り込むなら、間違いなく伊東、田中、守田の3人だ。逆にそれまで重要な役割を担ってきた鎌田大地や堂安律が外れ、森保体制発足当初は看板のように脚光を浴びていた三銃士(中島翔哉、堂安、南野)が、ワールドカップイヤーに入り2人も消えたわけだから、それは激震を意味した。
 

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