【識者の視点】非効率と矛盾を孕む代表強化。位置づけが曖昧だった東アジアカップで得たものは?

2015年08月10日 加部 究

指揮官にとってアジア情勢やチーム作りはいまだに手探り状態。

現時点でどの選手が戦力になり得るかを知るためのメンバー選考だったが、日本は未勝利かる最下位で大会を終えることに。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

 現状の日本代表は、別次元のノルマ(目標)をふたつ抱えていると考えるべきだろう。
 世界へ出れば挑戦者の日本は、アジア内ではターゲットになる。ワールドカップでベスト8を目指しながら、アジア予選は確実に突破しなければならない。世界を相手に番狂わせを狙うチームが、同時にアジア内で引いた相手を崩すテーマに取り組む。それは本来非効率であり、矛盾を孕んでいる。
 その点でまず東アジアカップは、大会そのものの位置づけが非常に曖昧だった。確かにブラジル・ワールドカップでアルジェリアを率いたヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、試合の性格に即して戦術もメンバーもガラリと変えて成功した。しかし日本にも同じような適応力があるかと言えば、やはり疑問符が付く。
 結局東アジアカップは、ワールドカップとアジア2次予選の中間的なレベルで比較的拮抗した試合が続くこともあり、ハリルホジッチ監督も単純に欧州組を外したベストメンバーを集めて大会に臨んだ。日本代表としては、目新しい選手が多かったが、別に「若手」を抜擢した印象はない。五輪代表組の遠藤航や浅野拓磨を除けば、3年後のロシア・ワールドカップへ向けて大きな伸びしろを期待されたというよりは、現時点でどれだけ戦力になるのかを確認したい選手たちが招集されたことになる。
 はっきりしたのは、指揮官がまだまだ日本やアジアの情勢、さらにはチーム作りについても、手探り状態にあるということだ。以前から「右SBには問題を抱えている」と話しており、今回は専門外の遠藤と丹羽大輝を試したわけだが、逆に本職の米倉恒貴は最終戦になって左SBでの起用に止まった。つまり、すでにJリーグで実力を確認済みの米倉より、右SBが未知数の遠藤や丹羽を試すことを優先したわけで、必ずしも連覇達成が最優先課題ではなかった。もちろん東アジアカップは、創設の目的や開催時期からして、優勝争いより新人発掘やバックアップメンバーの確認の意味合いが強いわけだが、それにしてもやはり実験と結果が効率的に両立したとは思えない。今大会では、アルジェリアとは異なる日本の実情や、アジア内でいかに日本の弱点が研究し尽くされているかなどを、ようやく確認したところかもしれない。

次ページ山口、米倉、武藤という好材料。だが、1トップは……。

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