降格候補筆頭→残留まであと一歩!曲者揃いのボーフムで浅野拓磨が掴んだ厚い信頼【現地発】

2022年03月19日 中野吉之伴

ファンは常に目に見える闘争心を求める

チーム内での信頼を徐々に掴んでいる浅野。(C)Getty Images

 今シーズンのブンデスリーガ開幕前に降格候補にあげられていたのは、ともに昇格組のグロイター・フュルトとボーフムだった。ほとんどの識者にとって、両クラブは当確で、「16位で入れ替え戦に回るクラブはどこになるのか」というのが注目点だったのは否めない。

 日本代表FWの浅野拓磨がプレーするボーフムにとっては、12シーズンぶりとなる1部リーグだ。戦力的に見ても、名だたるメンバーがそろっているわけではない。世間が注目する期待の若手がいるわけでもない。

 そんなボーフムが26節終了時で堂々の11位につけている。それどころか、ドイツ、いや世界中を驚かせる大仕事も成し遂げた。22節にドイツの絶対王者バイエルンをホームに向け、4-2で叩きのめしたのだ。シーズン前には降格候補筆頭の一つだったチームが、とりわけ前半は内容的にもバイエルンをあらゆる局面で凌駕し、さらに得点を重ねることもできるくらいのパフォーマンスを見せての勝利。ドイツのサッカーファンに極上の喜びをもたらした。
 
 炭鉱町を起源とするボーフムにあるクラブとして、ファンは常に目に見える闘争心を求める。試合が終わってユニホームがきれいなままの選手なんて見たくもない。そんなのは彼らにとってサッカーではないのだ。チームの勝利のために規律を守り、ギリギリとのところまで走り抜き、身体を張って相手を止め、身体を投げ出してでもゴールを狙う。そんな魂の輝きこそがチームの軸になければならないというのが、このクラブのアイデンティティだ。

 現スカッドにも曲者がそろっている。例えばCFのセバスティアン・ポルターはヴォルフスブルク、ニュルンベルク、マインツやウニオン・ベルリンといったクラブを渡り歩いてきた苦労人。実はU-15まではGKで世代別代表にも入っていたという。そのためGKの思考を読み取り、いやらしいポジションをとるのに長けているから頼もしい。フィジカルが強く、前線のつぶれ役として欠かせない存在となっている。

 左サイドから快足を飛ばしてぐいぐいドリブルで押し込んでいくゲリット・ホルトマンはこれまでの所属クラブではプレーがわがまま過ぎると批判を集めることが多かったが、ボーフムでは切り込み隊長として確かなステータスを確立。味方も予測できないプレーが確実に相手にとっても嫌なプレーであると共有されている。前述のバイエルン戦では圧巻のゴールを決めてもいる。

【動画】コンパクトに右足を振り抜き、正確なフィニッシュ!浅野の今季初ゴールをチェック

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