「パスを出せ!」遠藤航が同僚に怒る姿にファンは拍手。試合後、“鬼神の如く”躍動した主将に駆け寄ったのは…【現地発】

2022年03月12日 中野吉之伴

2点差からの逆転勝ちは10年ぶり

シュツットガルト戦で逆転勝利を呼び込む追い上げ弾を決めた遠藤。(C)Getty Images

 ゴールの持つ力というのは偉大だ。日本代表MF遠藤航と伊東洋輝がプレーするシュツットガルトがボルシアMGをホームに迎えた試合で、そのことを改めて感じさせられた。

 9戦連続未勝利だったシュツットガルトが相手に2点を奪われながらも、そこから3点を取り返しての大逆転勝利。10試合ぶりの勝点3を得た。2点差からの逆転勝ちとなると実に10年ぶりだ。この試合で、途中まで意気消沈していたファンに生きた希望をもたらしたのが遠藤だった。

 39分だ。ピッチ中央からボールを運ぶと左サイドへ展開し、そこからペナルティエリアへ走りこんでいった。パスは遠藤を越えてゴール前へ。だが相手のクリアボールが足下へこぼれてくる。躊躇することなく放たれたシュートは相手DFの足を弾き飛ばしてゴールへ流れ込んだ。両手を振り回して全身で喜び、ファンにサポートをアピールする遠藤に割れんばかりの歓声が送られた。

「得点者はワタルー」というスタジアムDJのコールにファンからの「エンドウ!」というレスポンス。声の大きさがこれまでと明らかに違う。何かがはじけたような圧力だ。
 
 試合の流れが変わっていく。ピッチにはボールを下がってばかりもらうのではなく、何度も何度も前のスペースに動き出していく遠藤の姿があった。アンカーでプレーしているときはパスの配給源だが、インサイドハーフで出ている今はパスを引き出す動きが必要になる。

 頭ではわかっているはず。ただ今まではどこか探りながら、ポジショニングが正しいかどうかを確認しながらプレーしていたような印象を受けていた。動いてもパスが来ない。そうこうしている間にボールを奪われて相手にカウンターを許すという場面がこれまでの試合では何度もあった。

 だが、この日の遠藤はリミッターが外されたかのように行動範囲が圧倒的だった。縦横無尽。ピッチのどこにでもいる。そしてあらゆるアクションが鋭い。左SBボワナ・ソサからの高いクロスボールに躍動感たっぷりに飛び上がり、身体全体をしならせて放たれたヘディングシュートはすごかった。枠をわずかに外したが、ドイツ代表マティアス・ギンターとスイス代表ニコ・エルベディという敵CBコンビをものともしない。

 そして同点ゴールの場面ではその日本代表MFが起点を作り、チャンスメーク。中盤センターでボールを受けると、逆サイドへターンするそぶりをフェイントで相手2人を素早く振り切ると、右サイドのタッチラインぎりぎりに鋭い縦パスを通す。スピード、コースともに申し分ない。ここからのクロスから、フュルリッヒの同点ゴールが生まれたのだ。

 これだ。違いを生み出すプレーだ。相手を凌駕し、チームを勝利へと導くプレーだ。遠藤は極上のワクワク感を提供している。何かしてくれるという期待をもたらしてくれている。

【動画】強烈なシュートでねじ込む!遠藤がボルシアMG戦で決めた2試合連続ゴールをチェック

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