「我々には明確なプレーモデル、原則がある」“岡田メソッド”が浸透するFC今治とは一体いかなるチームなのか?

2022年03月12日 大中祐二

「岡田メソッド」の構築に関わったキーパーソンが昨年9月に指揮官に就任

FC今治のオーナーである岡田武史氏。“岡田メソッド”を浸透させたチームで2022年シーズンに臨む。(C) Getty Images

 3年目のJリーグを戦うJ3のFC今治には、プレーの原則をまとめた独自の方法論「岡田メソッド」がある。J2を目指した今シーズンの戦いで、その影響はますます強くなっていきそうだ。

■宮崎キャンプでの反省
「すまん。いろいろ指示を出し過ぎた。原点に立ち戻って、パッションでサッカーをやろう」

 2月の宮崎キャンプで、橋川和晃監督は選手たちに謝った。

「我々はこういうサッカーをやりたいという全体像があって、それを実行するために一つひとつの場面でどんなプレーをするのか、いろいろな原則があるわけです。ところがキャンプでの私は原則の話ではなく、やり方に走ったところがあった。やっぱり、言い過ぎるのはよくないですね」
 
 3年目のJリーグを戦うJ3のFC今治には、自律した選手を育て、自立したチームを作るためにプレーの原則をまとめた独自の方法論、「岡田メソッド」がある。これを16歳までに落とし込むことが、前提のスタンスとなっている。

 橋川監督は昨年9月、リュイス・プラナグマ監督、布啓一郎監督に続き、シーズン3人目の指揮官としてトップチームの指揮官に就任した。クラブ内部からの昇格で、それまで務めていた役職名は、アカデミー・メソッドグループ長。2014年に岡田武史オーナーが着想し、4年かけて「岡田メソッド」としてまとめていく過程でも重要な役割を果たした、クラブにおけるキーパーソンの1人だ。

 では何を、どう「言い過ぎた」のか。それは例えば、どのゾーンにボールを運び、どこにフリーで前向きの選手を作り、攻撃のアクションを起こすのか。守備では、どのゾーンで陣形を整え、ボールを奪いに行く準備をするのか。プレーのそれは"やり方"についてである。

「言い過ぎると、選手たちはそればかりになってしまう。『ボールを奪いたい』『ゴールに向かいたい』という本能を奪ってしまうことになるんです」

 伝え方が大事だと橋川監督は言う。ひとつの言葉に、選手たちは敏感に反応するからだ。
「リュイスのとき、『前から守備をしに行くな』と言ったばかりに、チームのやり方として『上がってはダメだ』という意識が働いているという声が選手にあった。そういう誤解を起こさないためにも、岡田メソッドでは16歳までに原則をしっかり落とし込んで、あとは自由なんだよ、という形を取るんです」

 リュイス元監督の指示は、あくまでそのときのケースに限ったものだったはずだ。相手との力関係や時間帯によって、状況はどんどん変わっていく。やり方を当てはめようとするだけでは、すぐに不都合が出るだろう。そもそもきりがない。だが、個々の場面でやるべきプレーの原則は普遍的だ。
 

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