【連載】ミラン番記者の現地発・本田圭佑「中国政府をバックに莫大な投資を約束されたミラン」

2015年08月05日 マルコ・パソット

ミスター・ビーへの株式譲渡はついに最終段階を迎えつつある。

マーケティングの見地からも、ミランは欧州でトップを争うほどの強く魅力のあるチームに戻る必要がある。積極的な補強を進めている今夏だが、その陣容は今後、さらに大きく変貌を遂げるだろう。 (C) Getty Images

 ほんの片手ほど、そう、ビー・テチャウボン氏がバンコクからミラノに飛んだのはたったの5回だ。しかし、今回過ごしたミラノでの1週間は、歴史に残るものになるだろう。
 
 ミランの株48パーセントを近い将来に購入することで、シルビオ・ベルルスコーニ・オーナーと契約を交わしたのだ。
 
 この契約書は拘束力のあるもので、様々な条項が盛り込まれている。ただし、どちらかが最終段階で契約を放棄した時のペナルティーに関しては盛り込まれていない。つまり、両者ともにそんなことはあるわけないと考えているのだ。
 
 週末になってベルルスコーニは、"ミスター・ビー"をサルデーニャ島の別荘に招待し、時には専門家を交え、時には2人だけで、あらゆるテーマにつて話し合い、見解が異なるものについては妥協点を見出し合った。
 
 全ての話し合いが済んで最終的サインを交わすのは、9月末になると思われる。そうなると、ミランはほぼ半分がアジア資本のものとなり、ミランの金庫には約4億8千万ユーロがもたらされる。
 
 それにしても、ミスター・ビーとはいったい何者なのか。もう一度、詳しく見てみよう。
 
 資金を転がすタイ人のブローカーで、とてつもない金持ちなのは、もう皆さんもご存知だろう。銀行系に強く、なかでも一番の得意先は中信銀行、つまり中国政府の金庫である。だからミスター・ビーの資本の半分は、中国という国家そのものと考えていい。
 
 中国政府はミランを通して、中国代表チームの強化と、ワールドカップ誘致を目論んでいる。
 
 また、アブダビのADSセキュリティーも資本提供をしているが、彼らの狙いは香港市場でのミラン株の上場である。それと同時に、ミランというブランドの力をアジアでより上げることが、ミスター・ビーの主なミッションである。
 
 今後、彼は多くの決定権を持つ副会長にも就任する予定で、バルバラ・ベルルスコーニ、アドリアーノ・ガッリアーニに続いて3人目のCEOとなる。
 
 また、13人の重役が新たに設けられ、うち5人はミスター・ビーが任命し(おそらく中信銀行からも派遣されるだろう)、あとの7人はフィニンベストが任命し、1人だけどちらにも属さない人間が就任するはずである。

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