「不調」や「衰え」が指摘される名守護神オブラク。世界最高峰でも失点増で批判されるGKの“非情”

2022年02月22日 小宮良之

GKは「引き算」で評価される

堅守を誇ってきたアトレティコは失点が激増。オブラクの責任を問う声もあるが…。(C)Getty Images

 ゴールキーパーというポジションは、「引き算」で評価される。失点を救うビッグセーブよりも、失点という事実の方が重くのしかかる。失点に直結するミスをしようものなら、その後にどれだけファインセーブを見せても、「あれがなかったら」としつこく言われる。

 一方で、ストライカーは「足し算」のポジションである。絶好機をミスした後であっても、ゴールネットを揺らしたら、ミスは帳消し。ごっつぁんゴールであれ、プラスに変化する。そこは大きな違いだ。

 アトレティコ・マドリーのスロベニア代表GK、ヤン・オブラクはラ・リーガ王者の守護神である。少なくとも「世界最高GKの一人」と言えるだろう。ゴールライン上、"線で守る"GKとして他の追随を許さない。判断が質実剛健で、最善のポジションを取って準備し、最後までボールを見極め、シュートに立ちはだかる。失点確率を最小限にできるGKだ。

 ところが、今シーズンは失点が続いている。失点の多さは事実と言える。その結果、「不調」と言われるだけでなく、「(年齢的な)衰え」とまで囁かれる。
 
 まさに、オブラクは割を食っている。
 
ゴールを守るのは、GK一人ではできない。そこには明確な限界がある。トップレベルの選手に、エリア内からフリーでシュートを打たれ、コースも限定されていなかったら、防ぎようがない。

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 1月13日に行われたスペイン・スーパーカップの準決勝、アトレティコはアスレティック・ビルバオと対戦し、1-2と逆転負けしている。先制しながら、ゴールを守り切れなかった。GKオブラクは2失点を喫したわけだが…。

 オブラクに非はなかった。先制した後、チームとして腰が引けてしまい、相手の圧力をまともに受けてしまった。ディフェンス陣を中心に浮足立ってしまい、失点確率は上がっていた。自陣奥深くまで侵入され、危険なセットプレーを与えてしまった。

 至近距離からのシュートを、オブラクはポジショニングと反応だけで、立て続けに防いでいる。ほぼ正面にボールが跳んできたが、直前まで動かず、「シュートを誘い込んだ」という方が正しい。トップレベルのゴールキーピングだった。

 ただ、セットプレーでのチームメイトの対応はずさんだった。ほぼフリーでのヘディングシュートをGKの目の前で許し、失点につながっている。2失点目など、ヘディングシュートをフリーで撃たれた後、こぼれた球を再び、敵に思い切り蹴り込まれた。
 
 この失点をオブラクのせいにするなど、ばかげているし、さすがにやり玉に挙がっていない。しかし、失点は記録として残る。それは数字として重くのしかかり、次にミスで失点した時、「やはり失点が多い」となる。非情なまでの引き算だ。

 一つだけ言えるのは、チームとして防ぐもの、ということだろう。ただ、GKが背負った十字架を降ろすことも宿命的にできないのだ。

文●小宮良之

【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。

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