「鹿島時代にたくさんセットプレーで勝ってきた」秋田豊監督が、岩手に浸透させる“勝利から逆算したサッカー”とは――

2022年02月20日 郡司 聡

開幕戦で千葉を相手に歴史的なJ2初勝利をゲット!

岩手の指揮を執る秋田豊監督。昨季チームをJ2昇格に導き、開幕戦では千葉を相手に勝利を掴んだ。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

[J2リーグ1節]千葉0-1岩手/2月19日(土)/フクアリ
 時計の針は90+6分を指していた。

 いわてグルージャ盛岡の歴史的J2初勝利を告げるホイッスルが鳴り響くと、秋田豊監督は両腕でガッツポーズを作り、雄叫びをあげた。そしてその直後、コーチングスタッフと円陣を組み、勝利の喜びを分かち合う。「心の支えになる1勝」。試合後の秋田監督は、そう言って胸を張った。

 結果的に、岩手にとって歴史的なJ2初ゴールが勝利につながった。26分、右サイドでFKを得た岩手はキッカーの中村太亮がライナー性のFKを蹴ると、「サインプレーで大外を狙っていた」宮市剛が、冷静に千葉ゴールを射抜いた。
 
 岩手はファーサイドが空きやすい千葉の弱点を見抜いていたのだろう。開始9分。岩手はスローインから右サイドで起点を作り、宮市のクロスをファーサイドの中村太がヘディングシュート。GK新井章太を脅かすと、続く13分にも千葉のゾーンディフェンスの弱点を突く格好でセットプレーからファーサイドを攻略し、チャンスにつなげた。まさに宮市の決勝点は"三度目の正直"で奪った格好だ。試合後、千葉の鈴木大輔は「試合中も同じパターンでやられた」とうなだれた。

 勝利の大きな要因は、コンパクトな陣形をベースとした強度の高いプレッシングを相手に掛け続け、無失点で終えられたことに尽きる。ただセットプレー一発で勝ち切る様は、現役時代、秋田監督がプレーしていた鹿島アントラーズの伝統を彷彿とさせる。試合後の秋田監督も「鹿島時代にたくさんセットプレーで勝ってきた。むしろセットプレーでしか勝てないと言われていたぐらいですから」と苦笑いを浮かべた。もちろん、セットプレーに活路を見いだすのは、それなりの勝算があってこそ。秋田監督は「選手の個性を生かした結果」と言う。

 セットプレーのキッカーを担う中村太は抜群のキック精度を誇り、牟田雄祐や宮市ら、中で合わせる選手たちの身長は185cmを超えている。なお先発のピッチに立ったフィールドプレーヤーは10人中9人が180cmを超えるほどだ。そのため、千葉のユン・ジョンファン監督も岩手の高さを警戒していたが、岩手のセットプレーは相手のアラートを超える精度を発揮した。岩手の牟田は言う。

「僕たちは何十本もパスをつないで攻撃をすることはできない。自分たちの強みは高さで、セットプレーになると自分たちもチャンスだと思える。みんなで同じ方向を向けていることで実際に得点に結びつけられているし、それが自信にもつながっている」

J2リーグ 順位表

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