なぜ鹿島は水戸に負けた? 前線に届かなかった一か八かのロングボール。ピトゥカの奮闘は際立っていたが…

2022年02月14日 徳原隆元

攻めながらも決定打を欠き、逆にカウンターから失点

中心選手としての風格が漂っていたD・ピトゥカ。チームの命運を握る存在だ。写真:徳原隆元

 常勝鹿島の一時代を築いた名ディフェンダーが指揮を執ったチームのスタイルは、やはり彼の成功体験から導き出されたものだった。

 Jリーグ開幕を1週間後に控えた2月13日、鹿島アントラーズは水戸ホーリーホックとのプレシーズンマッチに臨んだ。コロナ禍によるスイス人監督レネ・ヴァイラーの来日が遅れ、冷たい雨がピッチを濡らしたこの試合で、采配をとったのはコーチの岩政大樹だ。鹿島が見せたスタイルは、これまで多くのタイトルを獲得してきた、高い基本技術に裏付けされた堅守速攻を主体としたサッカーだった。

 しかし、戦術のコンセプトは筋が通っている鹿島だが、展開されたスタイルには相違が見られた。本来、鹿島のカウンターサッカーは後方、中盤でボールを持った選手が前線へとドリブルで進出。この動きに呼応した他の選手たちがゴールを目指して攻め上がり、そこにスルーパスを繰り出すというのがスタイルだ。

 パスはグラウンダーでの供給が多く、ゴールへと迫る選手の足もとや走り込む位置を想定して出される。しかも複数の選手が呼応することによって攻撃は多彩となり、多くのゴールが生まれた。

 しかし、いばらきサッカーフェスティバルで見せた後方からのパスはハイボールが目立ち、しかも前線に位置する選手の一点を狙った守備ラインからの一気のロングキックが多用されていた。
 
 中盤から放たれる小気味よいショート、ミドルレンジのスルーパスに比べ、ハイボールによる、しかも中盤を省略した一か八かの大胆なロングパスとなると、敵からすればマークも前線の選手に限られるため対応が容易となる。さらに鹿島のコンビネーションプレーは現段階では発展途上にあるようで、ロングパス自体の精度が低く前線の選手に繋がることは少なかった。

 鹿島は攻めながらも決定打を欠き、逆にカウンターから失点。リードを許してからは、強引な単独のドリブル突破から状況を打開しようとする動きが目立つようになる。しかし、水戸のタイトな守備網を突破しきれず。0-1の完封負け。いばらきサッカーフェスティバル16戦目にして初の黒星を喫したのだった。
 

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