「ああ、無敗を止めちゃったなぁ…」痛恨ミスの“新主将”金古聖司を救った恩師の言葉「早く負けて良かったよ」

2022年01月08日 川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

金古聖司と振り返る「雪の決勝ドキュメント」<後編>

先制を許すも、その後の東福岡は金古(左)を軸に鉄壁守備を誇示。帝京に反撃の糸口を掴ませなかった。(C)SOCCER DIGEST

<前編はこちら> 

 後半5分、東福岡と志波芳則の狙いがものの見事に結実する。

 高い位置でボールを受けた本山雅志が小気味良いステップでキープし、帝京のマーカー4人を引きつける。そして後方から颯爽と駆け上がって中央のスペースを突いた青柳雅裕にアウトサイドで絶妙のパスを送り、盟友が冷静にダイレクトでゴールに蹴り込んだ。後ろから見ていた金古聖司は、「惚れ惚れした」と回顧する。

「あんな雪の中で、あんな崩しができるだって見惚れちゃいましたよ。え、そこアウト? って。プロでもなかなか観れないゴールです。本山さんはいつだって、なにかをやってくれるワクワク感があった。あのパスはホント、完璧でしたよね」

 ついに逆転に成功した東福岡。金古は「行けるって思った。逆に帝京はあんな綺麗な形で決められて、落ち込んだんじゃないですかね」と話す。その一方で、「ガチガチに引いて守ろうなんて考えてなかったです。普段通りにやれば勝てる。ボールを後ろにやるより前へ、前へと。敵陣でボールを回してこそ、ヒガシのサッカーですから」と力を込めた。

 当時のサッカーダイジェスト増刊『高校選手権・決戦速報号』を見返すと、10番・本山も「僕たちのやることは変わらない。外に開いて中で勝負する。パスは強めに出さなきゃいけないことも、みんなよく分かっていました」と語っている。
 

 帝京は後半14分、怪我でベンチスタートだった大型MF貞富信宏を早々にピッチに送り込んで攻勢を強め、同31分には木島良輔に代えてフレッシュな児島敏生を投入して、パワープレーに拍車を掛けた。

 それでも、膠着した戦況を打破できない。金古と千代反田充が立ちはだかる東福岡の堅牢を崩し切れず、チャンスらしいチャンスは掴めないままだった。

「時間が経つのが速かった。どうしようか、どうしようかって、結局ずっと頭を使っていたからだと思う。ちょっとしたミスが失点に繋がってしまいますしね。あとは、スパイクに雪が沁み込んで本当に冷たかったんですよ。爪先とか感覚がなくなりそうなほど。だからボールが来ないところでも、すごく身体を動かしてないとキツかった」

次ページ49勝2分けの金字塔。最後まで貫いた究極の“型”

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事