【選手権・準決勝展望】ファイナル進出をかけた激戦必至の対決はいずれも“優勝候補”vs.“ダークホース”の構図に

2022年01月07日 松尾祐希

前評判、国立までの道のりも異なる

決勝進出をかけて1月8日に準決勝の2試合が開催。上段左が大津の守護神・佐藤、右が関東一の攻撃の要・肥田野。下段左が高川学園の10番・林、右が青森山田の絶対的エース・松木。(C)SOCCER DIGEST

 優勝候補とダークホース――。奇しくも第1試合、第2試合ともに構図がはっきりとするカードとなった。

 第1試合に登場する大津と関東一は、ともに初めて準決勝に進出。ただ、前評判は対照的で、国立行きのチケットを獲得するまでの道のりもまるで異なる。

 優勝候補に挙げられている大津は、県大会の4試合すべて7点以上を奪い、合計32ゴールを挙げて3年ぶりの代表権を獲得。その勢いは本大会でも変わらず、3回戦まで毎試合3点以上を奪って8強入りを果たした。

 そして、最大の山場となった準々決勝の前橋育英戦。同じく優勝候補と目されたライバルチームに対し、今まで発揮してきた攻撃力ではなく守備力で相手を上回る。県予選は無失点、本大会も3試合で1失点しか喫していないチームは、前半11分にFW一村聖連(3年)の得点でリードを奪うと、以降は堅守を築いて相手に得点を許さない。

 とりわけ素晴らしい活躍を見せたのがU-18日本代表候補のGK佐藤瑠星(3年)だ。前半32分の至近距離からのシュートを止めると、後半終了間際には持ち前の高さを生かしてCKを冷静に処理。キャプテンのMF森田大智(3年)が後半途中に負傷交代を余儀なくされたが、守護神を中心に粘り強く戦って初の4強入りを決めた。

 7人で13得点を奪っている攻撃陣と、わずか1失点の守備陣に隙はない。さらに準々決勝で見せたように、割り切って戦えるのも今年の強み。守備に比重を置く布陣にシフトでき、セットプレーからゴールを奪うことも可能。森田、佐藤、MF薬師田澪(3年)、FW川口敦史(3年)、FW小林俊瑛(2年)といった個性的なタレントを軸に、いつも通りの戦いができれば、初の決勝進出が見えてくるかもしれない。
 
 一方の関東一は、一戦ごとに力を付けてきたチームだ。インターハイ予選では怪我人を多く抱えていたこともあり、2回戦で敗れるなど、夏までは不安定な戦いぶりが目立っていた。しかし、チーム内でミーティングを通じて戦い方を再度共有していくと、勝負強さを発揮して選手権の予選を勝ち上がった。

 ただ、この時点では全国大会で勝ち上がれるようなタフさはまだ身につけていなかったような印象だ。チーム内で掲げていた現実的な目標も、過去最高の3回戦進出だった。しかし、国立競技場でのオープニングマッチで中津東を6-0で撃破すると、尚志との2回戦では相手のストロングポイントを消す戦術を徹底。スコアレスで80分間を終え、最後はPK戦で勝利を掴んだ。

 一戦ごとに経験値を蓄積していくと、選手たちの中に自信が芽生える。チーム史上初の3回戦では矢板中央のパワフルなサッカーに手を焼いたが、終了間際にFW本間凜(2年)が強烈なミドルシュートを叩き込んで勝利を手にした。

 そして、迎えた準々決勝。今大会屈指の技巧派集団で、プロ内定者4名を擁する静岡学園に対し、我慢強く戦って最小失点に留める。それでも敗戦濃厚の展開だったが、終了間際にFW坂井航太(3年)が同点弾。またしても土壇場でネットを揺らし、最後はPK戦を制して初の4強入りを果たした。

 都予選では球際の弱さも顔を覗かせていたが、強豪校との対戦を通じてタフに戦う術が備わった。CB池田健人(3年)を軸に堅守を築き、限られたチャンスをMF肥田野蓮治(3年)らが決め切る。万が一決着がつかなくても、PK戦で大活躍しているGK笠島李月(3年)が控えているのも心強い。

 総合力の大津と粘り強く戦える関東一。勝ち上がりもカラーも異なるチーム同士の対戦から目が離せない。
 

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