本人は残留を希望も… 長友のインテル残留を厳しくするクラブの財政事情と選手登録枠の変更

2015年07月22日 弓削高志

今夏の選手売却益がないことにトヒル会長は激怒。

クラブの財政事情に加え、登録枠の変更も長友のインテル残留への道を険しくしている。(C) Getty Images

 インテルの長友佑都の契約期間が残り1年を切った。9月で29歳になる長友は「インテルに残りたい」というコメントを出し続けている。だが、今夏の移籍市場でインテルが置かれた状況は、劇的に変化している。
 
 イタリア・サッカー連盟は、今シーズンからセリエAの全クラブに対し、トップチームの選手登録枠を最大25人まで、とする人数制限を義務付けた。「最大25人枠」導入初年度は、25人中8人がイタリア国内クラブの育成組織出身であることも制約に含まれる。
 
 これを受けて、今夏の移籍市場における需要と供給のバランスに異変が起きた。これまでプレー機会を失っていたイタリア人の若手への引き合いが強くなり、逆に中堅やベテランのリザーブ・プレーヤーへの需要が極端に低下。さらに、これまで市場の調整弁になってきた"高年俸だが知名度のある選手"が軒並み放出対象となった。
 
 インテルが長友を放出リストに載せざるを得ないのは、クラブの財政事情によるところも大きい。
 
 スポーツディレクターのピエロ・アウジリオは、6月下旬にASモナコから獲得したMFジョフレー・コンドグビアの移籍金として約3000万ユーロ(約42億円)、また昨シーズン後半戦のレンタル期間終了後、義務付けられていたFWジェルダン・シャキリの保有権買い取りに1700万ユーロ(約23億8000万円)をすでに支払った。7月頭には、コロンビア代表CBのジェイソン・ムリージョの獲得にも800万ユーロ(約11億2000万円)を費やしている。
 
 フロントは、戦力を一新してスクデットを争いたいロベルト・マンチーニ監督の要望に応えるべく補強を急いでいる。さらに、ヴォルフスブルクのMFイバン・ペリシッチの獲得も目前とされているが、このままでは今夏のクラブ収支も赤字まっしぐらだ。
 
 今年5月、FFP(ファイナンシャル・フェアプレー)規定に反する債務超過によって、インテルはUEFAから2000万ユーロ(約28億円)の罰金処分を受けた。実際の処分へ猶予期間はあるが、エリック・トヒル会長は今夏の選手売却益がほとんどないことに激怒しており、「誰かを放出し、売却益を上げるまで追加の補強は許さない」と、フロントを叱責したという。
 
 7月15日付の『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙の報道によれば、"今夏の優先放出リスト"にはFWシャキリやDFネマニャ・ヴィディッチらに混じって、長友の名も含まれている。

次ページマンチーニ監督の4バック構想にも入っていないのは明らか。

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