「使い物にならない」から「守備の要」へ――。マドリーの“寡黙なCB”ミリトンはいかにしてのし上がったのか【現地発】

2021年12月23日 エル・パイス紙

欠場した試合は休養が与えられたグラナダ戦のみ

いまやマドリーの守備の中心となっているミリトン。(C)Getty Images

 チャンピオンズ・リーグのインテル戦の最中だった。厳しさと慎重さをもって選手を品定めすることで知られるサンティアゴ・ベルナベウの観客が、その"詮索癖"を脇に置いて、エデル・ミリトンに大声援を送った。

 ミリトンは予期せぬ形でのし上がったアイドルだ。マドリーに加入したのは2019年の夏。前所属クラブのポルトに支払われた移籍金はDFとしてクラブ史上最高額の5000万ユーロ(約63億円)だった。

 しかしそれから1年半が経過してもほとんど使い物にならず、今年3月を迎えた時点では、その莫大な投資をペイするのはもはや困難と見られていた。それがラファエル・ヴァランヌが新型コロナウイルスの陽性とコンディション不良のダブルアクシデントに見舞われ、左膝を負傷したセルヒオ・ラモスが医務室を離れることができない中、CBの序列において最前列に配置されると、それまでの不安定な姿から一転してソリッドなプレーを見せ始めた。

【動画】インテルMFにまさかの報復パンチを受け、激昂するミリトン
 そのステータスは今シーズン、さらに強固なものになっている。開幕以来、欠場した試合は休養が与えられたラ・リーガ14節のグラナダ戦のみ。プレーの正確性に定評のあるナチョを押しのけて、新加入のダビド・アラバのパートナーの座を不動のものにし、カルロ・アンチェロッティ監督も「戦術面で成長した」と目を細める。

 まさに0からの100へのステップアップを遂げたミリトンを支えたのが、カゼミーロとも比較される忍耐力、几帳面さ、そして研究熱心さだ。人柄についても、チーム関係者の誰もが「寡黙」と口を揃え、さらにその1人がピッチ内外でのギャップをこう説明する。

「ピッチ外では何事にも動じることがない。心拍数はチームで一番低いんじゃないかな。でも練習や試合では、別人のように緊張感を保って貪欲でアグレッシブなプレーを見せる」

 今シーズンのマドリーにおいて、CBは唯一レギュラー陣が総入れ替えとなったセクションだ。長年チームを支えてきたヴァランヌとセルヒオ・ラモスが揃って退団。そんな中、新たに誕生したのがミリトンとアラバのコンビだ。

 アラバが覚えたてのスペイン語で周りに指示を出しながらDFラインを統率すれば、ミリトンは機動力を活かしピッチを幅広くカバーする。連戦が続き、連携を深めるための練習時間がなかなか確保できない中、ミリトンはアシスタントコーチが作成した短尺の映像を繰り返し見ることで個の役割やグループ戦術の理解に役立てている。

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